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ルーデルの不経済が簡単に克服できるわけがない!

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「やぁ、いつもありがとう。今日も綺麗だね」


廊下で掃除をしていたメイドのリリーナに対し、当主であるリュートは朗らかに笑いかけながらすれ違い様にそう言った。
たったそれだけのことだが、リリーナの不愉快度数が急上昇をする。そういった光景が屋敷中で見られたが、誰もかれもがリリーナと同じように苛立ちを募らせていた。
皆が皆、リュートのことが嫌いである。リュートは前時期当主だったショウを卑劣な手段で追い落とした外道だからだ。


「ちっ、この前までは死人のような顔してやがったのに・・・」


元ショウ付のメイドだったリリーナは、最近元気になったリュートを見て心底苛立たし気に呟いた。

リリーナはここ数か月、寝る間も惜しんで書類と向き合い、領地運営に四苦八苦していたリュートの死にそうな顔を見るのが好きだった。自分の慕っていたショウを嵌めた外道が地獄を見ている様を見ていると胸がスカッとしていた。
原因がルーデル領の不経済にあることはわかっている。問題は深刻だし、リュートへの私怨を抜きにすれば決して笑って済ませられることではなかった。

だが、少なくともリリーナにはどうでも良かった。ある程度のところでリュートの死に顔を見慣れたところで暇を貰おうと思っていたからだ。
何故ならリリーナだけではないが、ショウを慕っていた者はある程度ショウの足取りを追っており、既に隣国のオールヨークという町に滞在していることを知っていた。
リリーナはショウの後を追おうと思っている。すぐにそうしないのは、リュートが何かしらスキャンダルを出して、辺境伯の地位から追い落とせるネタがないか探っているからだ。
だが、リュートは連日運営に心血を注ぐばかりで、特にスキャンダルを起こすことなく過ごしている。
そろそろ見切りをつけて退散しようか、そんなことを考えていたときだった。

あるときから最近のリュートは少しずつ顔色が良くなってきたと思ったら、今では憑き物が落ちたかのようにスカッと笑顔でハツラツとしている。
話に聞くと経済的な問題を解決する目途がついたとのこと。
その日からリュートは以前のようにヘラヘラ笑い出し、メイドに色目も使う余裕まで出ていた。


(一体どうして?ルーデル領の不経済なんて、あの男に簡単に解決できる方法なんて見つけ出せるはずが・・・)


リリーナはどうしてもそこが腑に落ちず、もうしばらくは探るためにルーデル邸にいようと思ったのだった。
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