国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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ルーベルト邸の変化

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ラルスは父の制止も聞かず、城を飛び出した。
待機している王族用の馬車にすぐに出すように命令し、ルーベルト邸を目指して走らせる。これぞまさしく暴走であった。


「急がせろ!」


ラルスは御者に向かって叫ぶが、一応王太子相手であるにも関わらず御者の反応は冷ややかだ。とりあえず付き合ってやっている、そのような態度がありありと出ていたし、そもそも護衛騎士すらついてきていないのだが、すっかり焦っていて冷静ではないラルスが気付くことはない。

そしてラルスを乗せた馬車は、慌ただしくルーベルト邸の門前にまでたどり着く。


「僕だ。ラルスだ。すぐにキアラに会わせてもらいたい」


王太子といえど、先触れも出さずに公爵邸を訪れるなど無礼ではあるが、今のラルスにそのような配慮ができるような余裕は精神的にも時間的にもなかった。


「はぁ・・・えっと・・・とりあえず確認しますのでお待ちを・・・」


門番の男はどこかぼうっとしていたが、それでもとりあえず取り次ぐ意思を示す。
ちなみにこの門番がぼうっとしていたのは、既に解雇が確定している者である故に無気力であるからだ。


「はぁ、確認・・・えっと、ダグラス様?それともお嬢様かしら?」


「うーんと、お嬢様に会いたいとのことなので、お嬢様でいいんじゃないか?」


「はぁ、お嬢様の方か・・・気が重いわ」


門番と同じく解雇が確定している使用人の女が気だるげに屋敷内へ入っていく。
自らに解雇を言い渡したキアラに、大事な用件があるとはいえやり取りをしに行くのは気が滅入るようだ。
針のむしろのような生活だが、それでも解雇されるギリギリまで勤めて少しでも多く俸給を得られるようにしようとしている者達だ。「ショウを迎え入れるためにはいてはいけない存在」として認識されている彼らの解雇の決断が覆ることはない。よって金のためとはいえ、彼らの労働意欲は低い状態にあった。

キアラに取り次いでくれるようになり、少し冷静になったからだろうか・・・ラルスは彼らの態度を見て、ここで漸く異変に気付いた。


(あれ?僕の扱いが雑ではないか?)


以前ならば・・・というか以前は先触れ無しという無礼な振る舞いは無かったというのもあるが、当然ながらもっとラルスのことを尊重していた。門番は既に明後日のほうを見てラルスのことなどどうでも良いかのように振る舞っている。
執事が出てきて応対する様子すらない。要するにキアラからの返答待ちの間、ラルスは門前で完全に放置されている。さしものラルスもルーベルト邸が自分の知るものと違っていることに気付いた。
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