国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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慈悲は無い!

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「ご主人様!どうかお願いします!」


キアラに解雇を予告された使用人達一同は、ダグラスのいる執務室に押しかけていた。
キアラは解雇にする使用人達には紹介状も出さないと宣言した。公爵家仕えの経歴があっても、紹介状がなければ他の貴族に仕えることが出来ない。つまり解雇される使用人達は路頭に迷う危機の中にいるのである。
キアラは彼らが婚約者であったショウに対して無礼を働いていたことを怒っている。
とはいえ彼らがそのようにしたのは、ダグラスに倣ってのことだった。主人の意向を汲んだに過ぎないと情状酌量を求めたが、キアラは全くそれを認めることはなかった。


「主人が王に対して不敬を働いたとして、貴方達がそれに倣い処刑が決まったとしましょう。果たしてそれは情状酌量が認められるのかしら?主人の間違いを正すことなくただ意向を汲むというのなら、その結果については黙って受け入れるべきだと思うわ」


軽蔑の目でキアラがそう言ってのけ、使用人達は何も言い返すことが出来なかった。
適当に言い訳を見繕っては見たが「話しにならないわ」と、暖簾に腕押しである。
直談判を諦め、彼らは最後の望みとしてダグラスを頼ることにした。


「どうか、私達を解雇なさいませんよう、お嬢様に・・・」


「無理だ」


かつては恐れ、領地に蟄居することを望んですらいたはずのダグラスに一人の執事が泣きついたが、呆気なくそれは却下された。


「私はキアラの方針に何も口出しはできん」


ダグラスの言葉に使用人達は絶句する。
いかにキアラが時期当主と言えど、実の父であるダグラスが意見することも出来ぬなど、果たしてそんなことがあるのかと。
しかし今の覇気がなく、幽霊のようになっているダグラスを見ていると、キアラに対して意見することはもう出来ないのかもしれないと彼らは思った。


「な、ならばせめて、今ここでご主人様の権限で我々を解雇してください!そして紹介状を・・・」


「それもやるなと言われている。お前たちに一切の情けをかけるなとな」


使用人達は絶望に嘆いた。


「お嬢様は・・・まさかそこまでショウ・ルーデルのことを想っていたと?だったらどうして・・・」


裏切ったりなんかしたんだ?
そんな当然の疑問が彼らの頭に浮かんだが、それがわかるのはこの世に本人を除いて存在しないだろう。
幼馴染達も、実の父も、誰もかれもが理解できていないのだから。
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