国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

ルーベルト家の青天の霹靂

「なんだか凄いことになった・・・」


ルーベルト家の使用人達は、突然のダグラスの蟄居と、キアラの公爵位継承の話を聞き、大騒ぎになった。
元よりここ最近ダグラスもキアラも様子が今までとまるで違うために屋敷内は混乱していたが、発表を聞いたことで更に混乱をきたすことになった。


「なに、自分としてはこれで良かったと思ってますよ」


使用人の一人が言った。
何人かの使用人がそれを聞いて頷く。
ダグラスは癇癪持ちだ。気に入らないことがあれば使用人を怒鳴りつけ、気分によって首にしようとさえする。
そんな主人の世話をするのは苦痛の日々だったが、それでも給金が良いのでまだ続けていられた。かつてはダグラスから受けるストレスを、ダグラスが忌み嫌っていたショウ・ルーデルで発散しようと、訪れてきた彼に塩対応したりしたこともあった。
主人が嫌っているショウに無礼を働いたところで、咎められることはないと思ってのことだったが、実際に何の問題もなかった。

しかし、ダグラスが領地に引き籠り、キアラが主人となるのであれば、これまでのような苦労をすることはないだろう。使用人一同がそう思い、胸を撫でおろしていた。



だが、彼らが思うようにはいかなかった。


「私が当主になった際には、今から名前を読み上げる人については即刻解雇することにするわ」


ある日キアラは使用人一同を集め、戦々恐々する彼らの前で次々と名前を読み上げる。ルーベルト家の使用人の半分以上にあたる人数だった。


「なっ・・・！？どうして私が！」

「お、お嬢さま！？」


門番はおろか、執事でさえも首を切られるものが現れた。
場は騒然とし、名を呼ばれた者は半狂乱になってキアラに縋る。


「今名前を読み上げた者は、私の婚約者であるショウに無礼を働いた者よ」


しかし、キアラのその発言を受け、場はシーンと静まり返った。
婚約者・・・？元婚約者じゃなくて？
使用人達はここ最近のキアラの変化については気付いていたものの、その詳細についてはまだわかっていない。
だから彼女の口からショウの名前が出たことに混乱していた。


「貴方たちがいたら、ショウをこの屋敷に迎え入れることができないわ。だから首よ」


キアラはそう言って、立てた右手の親指をくいっと下ろすジェスチャーをした。
キアラの発言と公爵令嬢らしからぬ下品な仕草に、一同は唖然とするのであった。