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交わらぬ道

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「調整次第聖女が来る・・・って、それは一体どれくらい時間のかかることなんだ?」


聖女達はそれぞれが重要な職務に就いている。
世間体のこともあるだろうから、他に大事な用事が出来たからと簡単にほいほいとは来させられないはずだ。
調整次第、というのはその辺の問題をクリアしてからということだろう。


「誰がどこで何をしているのかは私にもわからないから、それははっきりとはわからない。けど、よっぽど強引に進めても早くて1年・・・普通なら2年・・・あるいは3年はかかるかしら」


アミルカの言葉に、俺はますますロクフェルの言った言葉の内容に一致するなと思った。
ロクフェルも数年で事が起きると言っていた。
それは恐らく聖女が全員揃ってからの話ということだ。そして彼が数年と言っていたからには、恐らく予定としてはアミルカの言う早くて1年ということはないとわかっているのだろう。

それにしても突然そんなおおごとの話になってきたわけだが、それでもすぐにどうではなく、数年後なのはもどかしいやら少しホッとするやら複雑なところだ。


「でも、聖女が集まった後は何が始まるのかはわからない。そのことは一切知らされていないから」


申し訳なさそうにアミルカが言う。核心が掴めないことに俺はほんの少しだけモヤっとしたものを感じたが、それでもここまで話が聞ければ十分だと思った。
ここまででも俺の立場では本来は絶対に聞けない話だ。ここまで聞かせてくれただけでもアミルカには本当に感謝しかない。


「私達がこうして普通に話していられるのも、そんなに長くはないかもしれない」


最後にアミルカはそう言って、口元を隠しことをやめる。


「さ、帰ろ」


そう言ってアミルカは手を差し出してくる。
俺はその手を自然に取った。

状況の激変により、俺達の別れの時が近づこうとしている。
アミルカはそれを感じ取り、つい現実逃避のようなことを口にしてしまった・・・先ほどの連れ出してくれというのは、そういうことなんだろうか。

それに対して俺は気休めですら頷いてやることが出来なかった。
だから、せめて今だけは手くらいは・・・ そんなことを思いながら、俺はアミルカの手をしっかり握るのだった。

俺もアミルカも互いの進むべき道を進んでいく。
手を繋いだのはアミルカからの逃げの誘いを、拒絶してしまったことへの謝罪の代わりだったのかもしれない。
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