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集中する女
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俺とローザはアミルカのいる部屋へと向かった。
なんだかんだと彼女に会うのは随分と久しぶりに感じてしまう。
「私よ。通しなさい」
アミルカの部屋の前に立って警護している女騎士にローザがそう言うと、女騎士は「少々お待ちください」と答えて、部屋の中にいるアミルカに伺いを立てようとする。警護している彼女は誰かがアミルカを訪ねるたびにそのようにしているのだろう。
・・・だが、それをローザが制した。
「いいわいいわ伺いを立てなくても。私が良いって言ったってことにして」
「え、でも」と戸惑う女騎士を押しのけ、ローザはアミルカの部屋の前に立つ。
哀れ女騎士は立場が高いのだろうローザに逆らうことが出来ないようで、ただただおろおろとしている。
「おい、伺いくらい別に・・・」
流石にこれは・・・と思って俺が言うとローザは人差し指を唇の前で立てながら「サプライズのほうが面白いじゃない」と言って動きを止めなかった。
「あ、あの・・・」
女騎士が何か言おうとしているが、ローザは「いいのよいいのよ」と言って取り合わない。
俺はごめんよと女騎士に小さく謝ってローザの後をついていく。
「アミルカ!入るわよ」
ローザはそう叫びながら唐突に部屋の扉を開けた。
「お、オジャマシマス・・・」
俺は申し訳程度に挨拶をしてローザの後をついていく。
アミルカの部屋は簡易的な要塞の一室なので当然ながら質素な作りだったが、それでもそこそこの広さがあった。
聖女は聖騎士団から身の安全は当然として、心的負担も軽減されるように気を遣われているらしいので、出来るだけリラックスできるように個室なども最大限融通利かせるようにしているのだろう。
そして当の聖女様であるアミルカは・・・ソファにうつ伏せで寝転がり、実に行儀の悪い姿勢で本を読んでいた。
リラックスしているといえばしているように見えるが、それでも恰好の割に読書に集中しているのか、こちらの様子に気付いていないようだった。
(そういえば読書していたとき集中しだすとこんな感じだったっけ?)
かつてアミルカが俺の部屋で一緒に読書していたときのことを思い出す。
いいところ・・・とても集中しているときなどは、お茶を煎れても何を言っても気付かない、そんなところがあった。
この分ならどのみち女騎士が伺いを立てても気が付かなかったかもしれない。
「アミルカ!お客さんよ!」
そんな本の世界に入り込んでいるアミルカを現実に強引に引き戻すようにローザは大声を張り上げた。
「へっ!?」
唐突に大声を出されて飛び上がるように驚いたアミルカは、俺とローザの姿を視界に入れると、一瞬にして顔を真っ赤にして硬直しだした。
なんだかんだと彼女に会うのは随分と久しぶりに感じてしまう。
「私よ。通しなさい」
アミルカの部屋の前に立って警護している女騎士にローザがそう言うと、女騎士は「少々お待ちください」と答えて、部屋の中にいるアミルカに伺いを立てようとする。警護している彼女は誰かがアミルカを訪ねるたびにそのようにしているのだろう。
・・・だが、それをローザが制した。
「いいわいいわ伺いを立てなくても。私が良いって言ったってことにして」
「え、でも」と戸惑う女騎士を押しのけ、ローザはアミルカの部屋の前に立つ。
哀れ女騎士は立場が高いのだろうローザに逆らうことが出来ないようで、ただただおろおろとしている。
「おい、伺いくらい別に・・・」
流石にこれは・・・と思って俺が言うとローザは人差し指を唇の前で立てながら「サプライズのほうが面白いじゃない」と言って動きを止めなかった。
「あ、あの・・・」
女騎士が何か言おうとしているが、ローザは「いいのよいいのよ」と言って取り合わない。
俺はごめんよと女騎士に小さく謝ってローザの後をついていく。
「アミルカ!入るわよ」
ローザはそう叫びながら唐突に部屋の扉を開けた。
「お、オジャマシマス・・・」
俺は申し訳程度に挨拶をしてローザの後をついていく。
アミルカの部屋は簡易的な要塞の一室なので当然ながら質素な作りだったが、それでもそこそこの広さがあった。
聖女は聖騎士団から身の安全は当然として、心的負担も軽減されるように気を遣われているらしいので、出来るだけリラックスできるように個室なども最大限融通利かせるようにしているのだろう。
そして当の聖女様であるアミルカは・・・ソファにうつ伏せで寝転がり、実に行儀の悪い姿勢で本を読んでいた。
リラックスしているといえばしているように見えるが、それでも恰好の割に読書に集中しているのか、こちらの様子に気付いていないようだった。
(そういえば読書していたとき集中しだすとこんな感じだったっけ?)
かつてアミルカが俺の部屋で一緒に読書していたときのことを思い出す。
いいところ・・・とても集中しているときなどは、お茶を煎れても何を言っても気付かない、そんなところがあった。
この分ならどのみち女騎士が伺いを立てても気が付かなかったかもしれない。
「アミルカ!お客さんよ!」
そんな本の世界に入り込んでいるアミルカを現実に強引に引き戻すようにローザは大声を張り上げた。
「へっ!?」
唐突に大声を出されて飛び上がるように驚いたアミルカは、俺とローザの姿を視界に入れると、一瞬にして顔を真っ赤にして硬直しだした。
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