国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

わからなければ考えない

酔ったロクフェルとはあまり絡みたくない。聞き出せることもなさそうだしと、退散を決めた俺を部屋の外で待ち受けていたのは、ローザだった。


「なぁ、ロクフェルのあれは一体どうしたんだ？」


ローザの顔を見るなり、俺は彼女に詰め寄っていた。
これまでのイメージと打って変わって、酒でだらしなくなったロクフェルを見られたことは斬新で面白かったが、結果としてただウザ絡みされただけだと思うと腹立たしいことこの上ない。
今度素面であったときには今日あったことは全て忘れている・・・なんてことはないだろうな？

ローザはげんんりしている俺の顔を見て曖昧に笑いながら、小さく溜め息をついた。


「残念ながら私にも何があったからはわからないわ。多分、今ここにいる中ではロクフェル本人しか知りえない、極秘事項のようね」


「あれだけ酔えるんだから、ロクフェルにとってはよほど良いことがあったんだろうな。何か予想はつくか？」


「さぁ？ただ、ロクフェルにとって喜ばしいこととなると、正直良い事だとは思えないわ」


ローザが肩を竦めてそう言う。
お道化た仕草であるが、その表情にはどこか険が滲んでいた。
ローザはロクフェルをとことん警戒しているらしい。


「数年以内って言ってたから、すぐにどうとかってことはないんだろうが・・・死人の種のランドールへの密輸が減ったことに関係あんのかな・・・」


顎に手をやって俺は考えてみるが、一体なんであるのか皆目見当がつかない。
そんなことをしていると、いつの間にかいつもの穏やかな笑みを浮かべていたローザが俺の肩に手を置いた。


「まぁ、今考えてもわからないことはわからないわ。それより、どうせここに来たんだからアミルカに会っていって。ここ最近忙しくて、すっかり疲れちゃってるみたいだから」


「アミルカか・・・」


ここ最近彼女は忙しく、俺は暇という対照的な感じだった。
それ故に冷やかしに顔を出すのも角が立つだろうか？と思い、中々足が出なかったのだが、それでもせっかく聖騎士団の陣まで来てしまったのだから、ついでに会っておくのもいいかと俺は思った。


「そういやロクフェルが会ってやってくれって言ってたっけか・・・」


なんだかロクフェルの言う通りにするのも嫌な感じがしたが。
それにしても自分の婚約者に他の男を積極的に会わせようとするなんて、アイツは寝取られ願望みたいなものがある変態なのかと思ってしまう。