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故郷の女の現状
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俺はリュカからマルセイユ家について知っていることを聞いた。
マルセイユ辺境伯家の次期当主として暫定していたマルセイユの長女サーラさんが留学したこと。留学先も帰国予定も不明。
既にマルセイユ家では実務まである程度は取り仕切っていたために、このタイミングでの留学は言うに及ばず極めて不自然である。
そしてそれと同時に現マルセイユ当主であり、ソーアの母であるシーラ様が表にあまり出なくなった。代わりに彼女の夫であり、ソーアの父であるシオン様が代行して姿を見せるようになったらしい。
ここまででも不可解なことで、俺は十分驚くのだが、その後に聞いたことは更に俺の度肝を抜いた。
「ソーアが次期辺境伯のための教育を受けている・・・だと?」
ソーアが辺境伯・・・ソーアが辺境伯・・・
俺は口をパクパクさせ、目を点にしていた。
『私では絶対になれないな。まずは能力が足りていない。私は一介の騎士として生きていくのが精いっぱいだよ』
『逆立ちしても私が領主を継ぐなどあり得ないな。長きマルセイユの歴史に幕を下ろすだけだ』
かつてソーアは冗談で「もしも辺境伯になれ、と言われたらそうする?」と問うた時に、このように答えたことがある。
それが一体どうした心変わりをしたのだろう。本当に長きマルセイユの歴史に幕を下ろす気になったのだろうか?
「当然表沙汰にはなっていないけどね。もしかしたら、だけど・・・今は代々的には公表しないけど、既にソーア・マルセイユが次期辺境伯なのは内定していて、教育が終わり次第継承するのかもしれない」
「なんだってそんな・・・あっ・・・」
俺は声を上げそうになり、そこで気付いた。
マルセイユ領で起きたとみられる大規模な海難事故(?)。
本来嫡子であったサーラさんの留学という名の消失。
そして実質的に失脚した可能性があるとみられるシーラ様。
ここまで揃えば自然といろいろ邪推してしまう。
というより、やんごとなき何かがあったと思えばソーアの現状についてもおのずと想像がついてくる。
「・・・一体何があった?ソーア・・・」
俺は愕然として、結局以降他のニュースについては手に取ることも出来なかった。
マルセイユ辺境伯家の次期当主として暫定していたマルセイユの長女サーラさんが留学したこと。留学先も帰国予定も不明。
既にマルセイユ家では実務まである程度は取り仕切っていたために、このタイミングでの留学は言うに及ばず極めて不自然である。
そしてそれと同時に現マルセイユ当主であり、ソーアの母であるシーラ様が表にあまり出なくなった。代わりに彼女の夫であり、ソーアの父であるシオン様が代行して姿を見せるようになったらしい。
ここまででも不可解なことで、俺は十分驚くのだが、その後に聞いたことは更に俺の度肝を抜いた。
「ソーアが次期辺境伯のための教育を受けている・・・だと?」
ソーアが辺境伯・・・ソーアが辺境伯・・・
俺は口をパクパクさせ、目を点にしていた。
『私では絶対になれないな。まずは能力が足りていない。私は一介の騎士として生きていくのが精いっぱいだよ』
『逆立ちしても私が領主を継ぐなどあり得ないな。長きマルセイユの歴史に幕を下ろすだけだ』
かつてソーアは冗談で「もしも辺境伯になれ、と言われたらそうする?」と問うた時に、このように答えたことがある。
それが一体どうした心変わりをしたのだろう。本当に長きマルセイユの歴史に幕を下ろす気になったのだろうか?
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そして実質的に失脚した可能性があるとみられるシーラ様。
ここまで揃えば自然といろいろ邪推してしまう。
というより、やんごとなき何かがあったと思えばソーアの現状についてもおのずと想像がついてくる。
「・・・一体何があった?ソーア・・・」
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