国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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狂気の提案

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リュートは死人の種というものについて深い理解があった。
一部の高位のアンデッド系の魔物が放出する大粒の胞子のようなもので、風に乗って人などの生物に接触すると、そこからその生物に寄生し、最終的には体を乗っ取ってしまう恐ろしいものだ。
乗っ取られた人間は徐々に思考を奪われ、ただただ周りの生物を襲うようになる魔物同然の存在と化す。一度取り付かれた人間の救助は不可能で、そうなった場合出来ることは、暴れ出す前に殺すーー これだけである。

りゅートはよりによって初陣で死人の種の脅威を目の当たりにした。故にしっかり死人の種について調べ上げ、その恐ろしさについては十分に理解していた。関わるべきものではないと思っていた。

だがーーー

今リュートの目の前にいる男、ブラホードは彼に対して信じらないことを口にした。



「死人の種を採取する・・・これが大きな収入になります。領主様」


ブラホードの用事とは、財政健全化に向けての提案であった。
まさに渡りに舟だと前のめりになって話を聞いたリュートは、だがしかし、ブラホードの語る内容に頬を引きつらせることになった。
リュートは死人の種のために仲間を失っている・・・それどころか、自身の身の安全さえ脅かされそうになってしまった。
まともな神経なら死人の種の名を聞いただけで警戒するだろう。リュートも当然ながらそうだった。


「死人の種の採取だと?正気か?」


これまで浮かべていた友好的な笑みを消し、リュートは目線をブラホードに向けた。
だが、ブラホードはその視線を受けてなお平然と穏やかな笑みを浮かべている。リュートの反応など予想していたようであった。


「正気も正気。ですが確かに領主様から見れば、狂気でしかありえないと思うことでしょう。ですが、今のルーデルの財政難を解決するには、この手が一番であると思われます」


まるで悪びれもせず自信を持ってそう言うブラホードに、リュートは訝しんだ目線を向ける。


「死人の種は確かに危険極まりない代物です。ですが、取り扱いさえきちんとしていれば、それほどの脅威にはなり得ません。実際私はもう10年以上死人の種で副業をしておきながら、一度の事故も起こしていません」


なんてことはないと言わんばかりにそう言ってのけるブラホードに対し、リュートは何も言えずに口をぱくぱくさせた。
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