363 / 471
思わぬ救世主
しおりを挟む
「はぁ・・・」
現ルーデル領を治める辺境伯として運営に頭を悩ませるリュートは、力なくため息をついた。
保身のためとはいえ、弟であるショウからかすめ取ってまでその座を手に入れた彼だが、幸福感があったのはそれこそ最初の最初だけ。
今では苦しいルーデルの財政状況にひたすら頭を抱える日々を送っていた。
かつてショウがまだ時期当主として実務を担っていた頃、王都で暮らすリュートの再三のおねだりを、ルーデルの財政状況は吹けば飛ぶような有様であるということを理由に、それは出来ないと断っていた。
しかし軍備やインフラに惜しみなく金を出している様子をリュートが見て、ショウはきっと不仲である自分に金を使いたくないのが本当の理由だと思い込んでいたのだ。
ところが実際に蓋を開けてみれば毎日が数字との睨めっこであり、どれだけ削るものを削り、取れるとこから取ろうとしても財政状況はまるで良くなる気配がなかった。
ショウを引きずり下ろしたことにより、ショウ人気により舞い込んでいた寄付金がピタリと無くなってしまったからである。
これまでは今までと同じ。
リュートはずっと一心不乱に書類と睨みあいっこし、数字と戦ってきた。しかし状況がまるで良くなる様子がない。このままでは現状維持とて難しい。
そんな窮状を手紙にしたためて王家に送って援助を願い出たが、なしのつぶてだ。バックボーンとしてアテにしていた王太子も国王も、援助するどころかむしろ失脚の憂き目に遭うなどという噂が流れている。
「一体どうすれば・・・」
リュートは目頭を押さえた。
以前は屋敷にいるメイドに手を出そうとする余裕さえあったが、今ではそんな性欲すら起きぬほど精神的に追い詰められていた。
寝る時間を惜しみ、いたすら仕事に打ち込んでいても、結果は出ないし人望が高まる様子すらない。王家に縋りついて送ってもらった兵士ですら、最近はあまり自分を慕っていない気がすると気づいてもいた。
こんな枯れ地の領営をするくらいなら、まだショウの監視下の元で細々と王都で暮らしているほうが良かった。最近はずっとそんなことを考えていた。
誰でも良い。この状況を助けてくれと、日々ずっと願っていた・・・そんなリュートの元に訊ねてきた人間がいた。
「副騎士団長ブラホード・・・?一体何の用事だというんだ?」
ルーデル騎士団で暗躍する、ブラホードがリュートの救世主になろうとしていた。
現ルーデル領を治める辺境伯として運営に頭を悩ませるリュートは、力なくため息をついた。
保身のためとはいえ、弟であるショウからかすめ取ってまでその座を手に入れた彼だが、幸福感があったのはそれこそ最初の最初だけ。
今では苦しいルーデルの財政状況にひたすら頭を抱える日々を送っていた。
かつてショウがまだ時期当主として実務を担っていた頃、王都で暮らすリュートの再三のおねだりを、ルーデルの財政状況は吹けば飛ぶような有様であるということを理由に、それは出来ないと断っていた。
しかし軍備やインフラに惜しみなく金を出している様子をリュートが見て、ショウはきっと不仲である自分に金を使いたくないのが本当の理由だと思い込んでいたのだ。
ところが実際に蓋を開けてみれば毎日が数字との睨めっこであり、どれだけ削るものを削り、取れるとこから取ろうとしても財政状況はまるで良くなる気配がなかった。
ショウを引きずり下ろしたことにより、ショウ人気により舞い込んでいた寄付金がピタリと無くなってしまったからである。
これまでは今までと同じ。
リュートはずっと一心不乱に書類と睨みあいっこし、数字と戦ってきた。しかし状況がまるで良くなる様子がない。このままでは現状維持とて難しい。
そんな窮状を手紙にしたためて王家に送って援助を願い出たが、なしのつぶてだ。バックボーンとしてアテにしていた王太子も国王も、援助するどころかむしろ失脚の憂き目に遭うなどという噂が流れている。
「一体どうすれば・・・」
リュートは目頭を押さえた。
以前は屋敷にいるメイドに手を出そうとする余裕さえあったが、今ではそんな性欲すら起きぬほど精神的に追い詰められていた。
寝る時間を惜しみ、いたすら仕事に打ち込んでいても、結果は出ないし人望が高まる様子すらない。王家に縋りついて送ってもらった兵士ですら、最近はあまり自分を慕っていない気がすると気づいてもいた。
こんな枯れ地の領営をするくらいなら、まだショウの監視下の元で細々と王都で暮らしているほうが良かった。最近はずっとそんなことを考えていた。
誰でも良い。この状況を助けてくれと、日々ずっと願っていた・・・そんなリュートの元に訊ねてきた人間がいた。
「副騎士団長ブラホード・・・?一体何の用事だというんだ?」
ルーデル騎士団で暗躍する、ブラホードがリュートの救世主になろうとしていた。
11
お気に入りに追加
664
あなたにおすすめの小説
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる