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ルーデルの黒の騎士団の庁舎の一室でのことである。



「なんだと失敗したというのかい?」


副団長室にて報告を聞いた黒の騎士団の副団長ブラホードは、部下からの報告を聞いて目を丸くした。


「はい。一人を残して全滅してしまったということです」


渋面をしながら部下がそう答えるのを見て、ブラホードははぁと溜め息をついた。


「オミトのことを知っている人間で固めたし、戦術さえ間違えなければ今の彼には負けるはずもないと思ったんだけどな・・・まさか返り討ちにあうなんて」


ブラホードの口ぶりからは今もなお信じられないといった感情が滲んでいる。
彼は手下を使ってオミトを暗殺するつもりだった。
的確な人選をし、戦術を与え、まず失敗は考えられないとさえ思っていた。

だが、実際には失敗してしまった。


「報告によると、オミトが魔術を使ったと聞いております」


「・・・魔術?」


ブラホードはその話を聞いて訝しんだ。オミトは魔術など使うことはできないはずだった。勉強しているところを見たという報告もないし、元よりルーデル家の家令として務める以上そのようなことをしている時間など無いように思える。
ルーデルの騎士団は、魔科学技術研究所のテクノロジーを使った戦をするが、それはあくまでショウの判断によって取り入れたに過ぎない。ショウ以外には彼に近かったオミトを除いて基本的に魔科学に興味も持っていないので、知識もない。
だから、魔術符というアイテム一つで誰しもが魔法を使うことが出来るなどということは、思いも寄らなかったのだ。
故にブラホードはオミトが自分達の知らぬ間に魔法を使うことが出来るようになったのでは、と勘違いをした。


「それから、魔法を使う少女と行動を共にしているようです」


「少女を・・・?どういう状況だろう・・・」


オミトが少女をはべらしていることに疑問を抱いたが、しかしそれはこの際置いておく。
その魔法使いの少女に魔法を習ったということであれば、とりあえずオミトが魔法を使ったということについてはある程度理解が出来るからだ。


「自分のスタミナ不足を魔法でカバーしたのか・・・いや、道理ではあるが、そう簡単に出来るものなのかねぇ」


本来ならそう簡単に出来ることではない。魔法を使うには才能が必要だし、オミトにはそれがない。
だが、ブラホードは魔科学に無知故に、オミトにとって都合が良い方に誤解した。


「迂闊に攻めれば手痛い反撃に遭うかもね。ちょっと考えようか・・・オミトに対する襲撃は、今のところ中止で」


ブラホードはこれ以上数で攻めても、魔法を使うことができるオミトを攻略するのは骨が折れると判断した。



「やれやれ、死人の種のことを知られた人間をここまで戻したくはないんだけどねぇ・・・どうしたものかな」


ブラホードは深くため息ついた。
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