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襲撃者は顔見知り

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「さて・・・どうして突然襲ってきたのかきちんと理由を話してもらおう・・・む?」


追い詰めた襲撃者のリーダー格の男に、オミトがゆっくりと近づいていったときに異変に気付いた。



「この男・・・」


オミトは捕らえた襲撃者を見て、絶句した。


「オミトさん、どうしたんですか?」


後からやってきたライラが訊ねると、オミトは首を横に振った。


「この男、自害した。何も口を割るつもりはなかったらしい」


「えっ・・・」


ライラがちらりとリーダー格だった男を見ると、彼は口から血を出して足を氷漬けにされたまま横たわっていた。


「いつでも飲んで死ねるように、毒を用意していたのだろう」


襲撃者達が逃げることが叶わなくなった時、いつでもその場で自害できるように毒を用意していたーー その事実を知り、ライラは息を飲む。


「どうしてそこまでして・・・」


自害する用意まであるなんて、ただの強盗などではない。その事実にライラは体を奮わせた。


「さてね・・・とりあえずはどんな顔をしているか拝んでやるとするよ。さぁご対面だ」


オミトは死んだと思われる襲撃者の焦げたローブを剥いで相手の顔を確認しようとした。



「・・・なに・・・?」


顔を見たオミトは思わず声を洩らす。その襲撃者に見覚えがあったからだ。
その顔は。ルーデル領の・・・黒の騎士団の団員の一人のものだったとオミトは記憶していた。


「まさか・・・」


リーダーの男の死体から離れ、他の死体の男達の顔も確認するオミト。


「何だと・・・?」


いずれの死体もオミトがルーデル領で見た記憶のある顔だった。
オミトは騎士団の人間の顔は記憶するように心がけていたので間違いないと確信している。オミトは黒の騎士団の人間に襲われたのだ。


「・・・知っている人間ですか?」


オミトの様子を見て、ライラが恐る恐る声をかける。


「あぁ、そうだ」


オミトは力なくそう答えた。
一体何が起こっているのか、オミト自身がそれがわからなくなっていた。




ーーーーー



深夜であったためか、そこそこの騒ぎがあったにも関わらず奇跡的にもあまり騒ぎにはならなかったものの、それでも宿屋で人を斬り殺した手前オミトは憲兵に取り調べを受けることになり、解放されたのは翌日の昼間になった。
結局オミトを襲撃してきた人間は全員が彼の知る黒の騎士団の人間であることは顔を見てわかったが、身なりは野盗のそれと同じように小汚いものだったので、憲兵も野盗の襲撃として処理をした。話が長くなるのでオミトはこの場では憲兵のその判断に従い、死体が特に自分の見知った人間であることは説明しなかった。

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