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襲撃者の最後

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「10秒たったか、行くぞ」


襲撃者たちのリーダーは、時間を計ってオミトが動けなくなっただろう時間が経過してから再度襲撃をかけるように指示を出した。
彼の予想ではオミトは既に息を切らして刀一本振るうことの出来ない状態になっているはずだった。不意打ちしたはずが読まれており、仲間を半数失ったが、スタミナ切れさえ狙えば最終的に勝利することはできるーー そう思っていた。


「なっ!?」


リーダーの男は驚きの声を上げた。
これから再び突入しようと思った宿屋の入口から、オミトが出てきたからだ。襲撃者達は進んでいた足を止め、一瞬で後退する。スタミナが切れるまでまだ時間があるのかもしれないーーまた距離を取らないと・・・とリーダーが考えたときだった。


ボンッ


と、空気が弾けるような音がしたかと思うと、襲撃者たちを大きな炎が襲った。

炎はオミトの右手から発せられたものだった。


「ぎゃああああああ!」


襲撃者たちは全員が火だるまになった。
ある者は即死し、ある者は燃える火を消すために地面に体をこすりつけながら転がりまわる。
襲撃者の中のリーダーの男は、自分の顔面が焼けたことでその激痛のあまりに顔を手で覆い、蹲っていた。


(なんだ!?一体何が起きた??オミトが魔法を使っただと??)


リーダーは自分の知らぬ情報があったことに驚愕し、己の不注意を恥じた。
あくまで剣だけの戦闘スタイルだと思っていたために、魔法に対する防備など考えていなかった。


(逃げねば・・・!)


現場で動くことが出来るのはリーダーだけだった。
もはや襲撃は失敗と断念し、踵を返すとすぐにその場から立ち去ろうと走り去る・・・つもりだった。


「ぐっ・・・!?」


リーダーの両足が一瞬にして動かなくなった。
つんのめるようにして前のめりに倒れ、自分の足に何が起こったのかを実際に見て確認する。両足に大きな氷の塊がくっついていた。


「間に合った!」


女の声が聞こえる。
ライラだった。彼女が氷魔法でリーダーの足を固定させ、逃げられないようにしたのだ。


「ちっ・・・」


リーダーは観念して、逃げることをやめる。
ちらりとオミトの方を見やると、ぜえぜえと大きく息を切らしながら、ゆっくり、ゆっくりとリーダーのところへ歩いてくるのが見えた。


(あとちょっと、あとちょっと長引かせれば勝てたというのに)


リーダーは悔しみで顔を歪める。
だが、それは一瞬のことで、次の瞬間にはニッと口角を上げていた。

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