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新たな災難

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エーペレスに見られていたことなど露知らず、何とも気まずい思いをしながらオミトは乗り合い馬車に乗ってルーデル領への帰路についた。
以前マルセイユ領まで来たときはいろいろとトラブルがあって到着に時間がかかったが、今回は細かな乗り換えから地理を頭に叩き込み、そして最新の地図まで購入した。何があっても迷うことはないし、スムーズにルーデル領まで帰ることが出来るだろうとオミトは安堵していた。ついでに言うなら旅に少し慣れているライラも一緒である。


馬車を使うとはいえ、やはり日程のかかる道のりであり、道中宿場町で何度か宿をとる必要がある。ライラは「楽しみですね」とうきうきして、オミトはどう反応して良いか困っていた。そしてそんなオミトをからかうように更にライラが距離を縮めてオミトに絡んで・・・といったところで、オミトはふと気になる気配を感じた。


「・・・」


ふいっと馬車の中から外をみやるオミト。
追跡されているような気配がする・・・とオミトは感じたが、特に後を追ってくるような存在は見当たらなかった。


(気のせいか・・・?)


オミトが外を見たときには、彼が感じていた気になる気配は鳴りを潜めていた。


「どうしたんですか?」


ライラの問いに、オミトは首を振って「なんでもない。ちょっと神経質になっていたのかもしれない」と答えるも、それでもどこかモヤモヤした気持ちを抱きながら、得物であるコテツから決して手を離すことはせず気を張りながら最初の宿場町の到着まで過ごしていた。









「やれやれ・・・現役をとうに退いたというのに、勘はまだ働いているようだな。もうちょい距離取ったほうがいいか」


そんなオミトの乗る馬車を遥か後方から見つめる男がいた。


の言う通りだな。舐めてかかれば痛い目にあう、か。確かにね」


男はそう言いながら、身を隠しつつ馬車の後を追う。
オミトが感じていた気配の正体が彼であった。

いま、オミトに新たな災難が振りかかろうとしていた。
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