国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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未来永劫変わらない

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「前に私は言っただろう?お前とは縁を切ると。命を助けてもらったことは感謝している。だが、仲間として友達として、恋敵としては、お前と接することは絶対にない」


ソーアの脳裏には以前ルーベルト邸でやり取りした時のことが浮かんでいた。
あの時は今後一切かかわらない、縁を切ると断った上でキアラにショウの冤罪を晴らせと訴えた。それでも、キアラはその提案を受け入れることはなかった。
ショウのことも、自分達との関係のことも、キアラの自分勝手のために切り捨てられたことをソーアは今でも恨んでいた。それだけキアラの裏切りは心堪えていたのだ。
大事な幼馴染だと思っていたから、尚更のことだった。


けんもほろろに言われたキアラはしばらく黙っていたが、やがて溜め息をついて肩を竦めた。


「はぁ、わかったわ。まぁ、こうなることはわかっていたしね。貴方は頑固・・・じゃなくて信念が強いもの」


ソーアの想いの力が強いことはキアラはわかっていた。
それがソーアの好ましいところではあったが、しかし今はその想いの強さ故にキアラとの中が改善することは絶対に無さそうだというのは、何とも皮肉な話であった。


「私は今後、ショウを国に呼び戻すために手を尽くすつもりよ。それには協力してくれる気はない?」


「・・・ない」


本来願ったり叶ったりの提案ではあったが、ソーアは少し考えた末に断った。


「それは自分でやる。お前と手を組む気は無い」


ショウに関わることであっても、それでもキアラと手を組むことはない。ソーアにとってキアラはそれだけ嫌悪する対象であった。


「お前に命を救われたことに対しては、私が辺境伯になった暁には何かしらのもので必ず返すつもりだ。でもそれだけだ。それ以外に関わりを持つことはない」


「そう」


キアラは少しだけ、ほんの少しだけ寂しそうに俯くと、またもワインを少しだけ口に含んだ。
そんなキアラの仕草が、本当に違和感だらけでソーアは落ち着かない。
こうまで感情を表に出す性格だったか?と。

もっと早くこうなっていればあるいはーーー と、ソーアはその先を考えようとしてやめた。
何を言うでもなく、踵を返して部屋を出る。

今のキアラが信じられないわけではない。だがかつて決別の可能性を突きつけたときに、キアラはそれでも良しとしてキアラの差し伸べた手を払いのけた。その事実は変わらない。未来永劫覆られない。
だからソーアは、二度とキアラと共に歩むことはあるまいと、そう決めているのである。


「・・・ごめんなさい」


小さく、そんな言葉がソーアの耳に入った気がした。
だがソーアは聞こえないふりをして、そのまま立ち去った。
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