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(察し)

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「それじゃ、これでこの詰所ともお別れということね」


エーペレスは感慨深げに詰所内を見回し、ほくそ笑んだ。
たった数か月であったが、ソーアを領民の、果ては国民の英雄として売り出すために住んでいたが、彼女にはそれなりに愛着があった。


「ソーア様が次期辺境伯として本家で領主教育ですか・・・これはまた何というか」


朗らかに笑っているのはオミト。


「戦女神はこのまま部下に引き継がせるとして、もう私が海に出ることは無いだろうな・・・」


ソーアは肩を落としながらそう言った。
勢いで次期辺境伯になると明言したものの、それからソーアの生活は激変することになった。
朝から夜まで徹底した領主教育。本来ならそこまでのペースでやる必要はないのだが、可及的速やかに教育を終わらせねばならないため、そのようなスケジュールになってしまったのだ。

本来なら海賊狩りの指揮も領主の大切な仕事ゆえにたまに現地に赴き経験を積ませるのだが、それについてはもはやソーアは十分にこなしてしまっているため、もう教育を終えて辺境伯になるその時まで実戦で海に出ることはなかった。


「つらいところではあるが、それでもショウを取り戻すために必要なことだ。頑張って何とかやり遂げてみせる」


気合充分にそう言うソーアを見て、エーペレス達は微笑んだ。
「すごく大変よ」と教えてやりたいところだが、とりあえず決意に水を差しても悪いので黙っている。


「何にせよ、ショウの取り戻すために大きく前進出来たことは間違いないわ」


エーペレスの言葉に、ソーアは大きく頷く。


「これで私の仕事も終わりだけど、頑張ってね・・・未来の辺境伯」


エーペレスの役目はソーアの支持を高めるためのプロデュースだ。その目的はショウの取り戻す環境作りのためのものだったが、既に十分に果たせたと言える。だから、エーペレスの仕事はもうないはずだった。


「何を言っている?今度はカリスマある辺境伯となれるよう、働きかけてくれないのか?」


「え?」


「いち海兵と、辺境伯とでは支持を得るために売り込む方法などは全然違うだろう?だったら、辺境伯としてもカリスマ性が保てるようにエーペレスさんにはぜひとも私の側近としてついてもらいたい・・・その、私は馬鹿だから、どこで失敗して支持を失うかわからないから・・・」


酒の失敗のことを思い出したエーペレスは「あっ・・・」と思わず声を洩らして察してしまった。
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