343 / 470
次期辺境伯
しおりを挟む
「・・・えっと・・・」
まさかのシーラのあっさりとした答えに、ソーアは固まってしまった。
「あら、何を驚いているの?私がサーラの側に近い立場にいたことくらい、わかっているでしょ?何をするつもりか、どう仕掛けるか、私には明確に話は来ていなかったけど、大体の予測はついていたわ」
サーラはシーラに対し事後報告で済ませるつもりでいた。
シーラの力を借りずとも自分の手だけでソーアの始末をつけられる自信があったし、親に娘同士の殺し合いを予告するのも少しばかり野暮かとサーラが考えてのことだった。
「マルセイユの長い歴史の中で、家督争いのために家族で決闘をしたという事例はいくつもあるのよ。当主教育でしか教わらないことだからソーアは知らないかもしれないけど、あなた達がやったことだって、長いマルセイユ家の歴史の中では別段珍しいことじゃないわ」
何でもないことのように言うシーラを、ソーアは唖然として見ていた。
当主として非情な決断を下すために教育を受けてきたシーラやサーラとでは、嫡子でもなく普通に育ったソーアと死生観がまるで違ってしまうのは仕方が無い。
「なんて顔をしているのよ。これからはソーアもこういう考え方に慣れなくてはいけないのよ」
そう言うシーラの顔は無表情であったが、その声には呆れの感情が含まれていた。
「えっ・・・?」
キョトンとするソーアを前に、シーラはふぅと溜め息をつく。
「先が思いやられるわね。次期辺境伯は貴方が就くことになるということなのよ。本当にわかっていなかったの?」
「は・・・?はあああああああ!?」
ソーアは仰天するあまり大声を上げる。その様子をシーラは冷めた目で見ていた。
「ど、どうしてそんな話になるのですか!?」
「逆に、どうしてそういう話にならないと思ったの?」
ソーアの問いかけに、シーラは無表情のまま冷静に返す。
「サーラがいなくなり、私もこれで当主の座を辞することになる。と、なると力関係から言ってもソーアがマルセイユ家を継ぐ流れになるのが自然なのよ」
「そんな・・・」
「ソーア貴方、まさか後々そういうことになる可能性も考えずに、これまで好き勝手にやってきたわけ?」
シーラの刺すような視線を受け、ソーアは身をすくめた。
国をひっくり返す大騒ぎになるとか、マルセイユが滅亡するまでのことまでを考えたことはあるが、自分が当主になる流れになる可能性についてだけは何故か全く考えていなかった。
まさかのシーラのあっさりとした答えに、ソーアは固まってしまった。
「あら、何を驚いているの?私がサーラの側に近い立場にいたことくらい、わかっているでしょ?何をするつもりか、どう仕掛けるか、私には明確に話は来ていなかったけど、大体の予測はついていたわ」
サーラはシーラに対し事後報告で済ませるつもりでいた。
シーラの力を借りずとも自分の手だけでソーアの始末をつけられる自信があったし、親に娘同士の殺し合いを予告するのも少しばかり野暮かとサーラが考えてのことだった。
「マルセイユの長い歴史の中で、家督争いのために家族で決闘をしたという事例はいくつもあるのよ。当主教育でしか教わらないことだからソーアは知らないかもしれないけど、あなた達がやったことだって、長いマルセイユ家の歴史の中では別段珍しいことじゃないわ」
何でもないことのように言うシーラを、ソーアは唖然として見ていた。
当主として非情な決断を下すために教育を受けてきたシーラやサーラとでは、嫡子でもなく普通に育ったソーアと死生観がまるで違ってしまうのは仕方が無い。
「なんて顔をしているのよ。これからはソーアもこういう考え方に慣れなくてはいけないのよ」
そう言うシーラの顔は無表情であったが、その声には呆れの感情が含まれていた。
「えっ・・・?」
キョトンとするソーアを前に、シーラはふぅと溜め息をつく。
「先が思いやられるわね。次期辺境伯は貴方が就くことになるということなのよ。本当にわかっていなかったの?」
「は・・・?はあああああああ!?」
ソーアは仰天するあまり大声を上げる。その様子をシーラは冷めた目で見ていた。
「ど、どうしてそんな話になるのですか!?」
「逆に、どうしてそういう話にならないと思ったの?」
ソーアの問いかけに、シーラは無表情のまま冷静に返す。
「サーラがいなくなり、私もこれで当主の座を辞することになる。と、なると力関係から言ってもソーアがマルセイユ家を継ぐ流れになるのが自然なのよ」
「そんな・・・」
「ソーア貴方、まさか後々そういうことになる可能性も考えずに、これまで好き勝手にやってきたわけ?」
シーラの刺すような視線を受け、ソーアは身をすくめた。
国をひっくり返す大騒ぎになるとか、マルセイユが滅亡するまでのことまでを考えたことはあるが、自分が当主になる流れになる可能性についてだけは何故か全く考えていなかった。
10
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。
応援していただけたら執筆の励みになります。
《俺、貸します!》
これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ)
ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非!
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる