国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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次期辺境伯

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「・・・えっと・・・」


まさかのシーラのあっさりとした答えに、ソーアは固まってしまった。


「あら、何を驚いているの?私がサーラの側に近い立場にいたことくらい、わかっているでしょ?何をするつもりか、どう仕掛けるか、私には明確に話は来ていなかったけど、大体の予測はついていたわ」


サーラはシーラに対し事後報告で済ませるつもりでいた。
シーラの力を借りずとも自分の手だけでソーアの始末をつけられる自信があったし、親に娘同士の殺し合いを予告するのも少しばかり野暮かとサーラが考えてのことだった。


「マルセイユの長い歴史の中で、家督争いのために家族で決闘をしたという事例はいくつもあるのよ。当主教育でしか教わらないことだからソーアは知らないかもしれないけど、あなた達がやったことだって、長いマルセイユ家の歴史の中では別段珍しいことじゃないわ」


何でもないことのように言うシーラを、ソーアは唖然として見ていた。
当主として非情な決断を下すために教育を受けてきたシーラやサーラとでは、嫡子でもなく普通に育ったソーアと死生観がまるで違ってしまうのは仕方が無い。


「なんて顔をしているのよ。これからはソーアもこういう考え方に慣れなくてはいけないのよ」


そう言うシーラの顔は無表情であったが、その声には呆れの感情が含まれていた。


「えっ・・・?」


キョトンとするソーアを前に、シーラはふぅと溜め息をつく。


「先が思いやられるわね。次期辺境伯は貴方が就くことになるということなのよ。本当にわかっていなかったの?」


「は・・・?はあああああああ!?」


ソーアは仰天するあまり大声を上げる。その様子をシーラは冷めた目で見ていた。


「ど、どうしてそんな話になるのですか!?」


「逆に、どうしてそういう話にならないと思ったの?」


ソーアの問いかけに、シーラは無表情のまま冷静に返す。


「サーラがいなくなり、私もこれで当主の座を辞することになる。と、なると力関係から言ってもソーアがマルセイユ家を継ぐ流れになるのが自然なのよ」


「そんな・・・」


「ソーア貴方、まさか後々そういうことになる可能性も考えずに、これまで好き勝手にやってきたわけ?」


シーラの刺すような視線を受け、ソーアは身をすくめた。
国をひっくり返す大騒ぎになるとか、マルセイユが滅亡するまでのことまでを考えたことはあるが、自分が当主になる流れになる可能性についてだけは何故か全く考えていなかった。
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