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ソーアの怒り  その1

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ここで時はソーアがサーラを斬首したときまで逆戻る。


武装船団の大量同時爆沈、そして何より司令塔のサーラが機能しなくなったことによって、ソーア達を包囲していた船は全てが海域より撤退した。
海域の安全が確保されると、ソーアは母艦の甲板に残った戦女神の隊員達を集めた。


「・・・さて、というわけで我々はいま、次期マルセイユ当主だったはずのサーラを討った」


ごくりと、その場にいた隊員達全員が唾を飲んだ。
ソーアの足元には木箱が置かれているが、中には先ほどソーア自身が刎ねたサーラの首が入っていた。
隊員達に今起きていることの実感がないほど、大それたことである。


「どういう腹積もりだったかはわからんが、騎士団内部での殺傷沙汰は法度。特に生死に関わるものに関しては一律で処分は死刑と定められている。これはサーラとて例外ではない故に、私が彼女の首を刎ねたのは概ね問題ない・・・だから諸君らは安心して欲しい」


安心しても言われても・・・と隊員達は恐縮する。
むしろソーアが自身の家族の首を刎ねておいて、平然としているように見えることに戸惑っていた。肝が据わっていると言えば良いのか、あるいは・・・



「さて、これからだがまずは帰港する。本来なら散った隊員達の亡骸を見つけたいところだが・・・」


悔しそうに顔を歪めるソーアを見て、隊員達も唇をきつく結ぶ。仲間の死の感傷に浸りたいところでもあるが、ざっと見で今いる海域は今敵がいないが、いつまた戻ってきて囲まれるかわからない。すぐにでもこの場を動きたいところであった。


「今回のはサーラ達海軍上層部の仕業だろうな。帰港したら・・・絶対に許さんぞ奴らめ」


ソーアの声は怒りに震えている。
サーラ達の目の上のたんこぶになっていた自覚はあるが、それでも非道な手段によって仲間達の命が失われたことにどうしようもない怒りが溢れて止まらなかった。


「まずはすぐさまミルツに詰め寄ってやる。その場で首を刎ねてやりたいところだが・・・」


ソーアの怒りを留まることを知らない。
だが、そんなソーアに水を差したのは、彼女達を離れたところで見ていたキアラだった。


「怒ってるのはわかるけど、すぐさまその怒りをぶつけてしまうというのは、果たしてどうかしら・・・」

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