国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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緊迫した帰港

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ミルツが報告を受けてから二時間後・・・

マルセイユの港にソーアの乗る戦女神の母艦が帰港した。
それを呆然と眺めているのは、ソーアが死ぬはずだったことを知っていた大将ミルツを含む一部の人間。彼らの顔は皆一様に青ざめていた。

報告は何かの間違いではないか?
この戦女神の母艦はただ鹵獲したものではないか?

皆、そんなことを考えていた。
だが、彼らの思っていた通りにはならなかった。船から降りてきたのは、紛れもなく死ぬはずだったソーア・マルセイユだった。特に捕らえられている様子もない。
ソーアはサーラの罠をかいくぐり、生還したことが明らかとなったのだ。


「では・・・サーラ様は・・・!?」


斬首されたと報告を受けていても、ミルツには信じられなかった。
マルセイユの次期当主として、絶対的な力を持ち、忠誠を使ったサーラが死んだなどとは考えも及ばなかったのである。


「・・・はっ!?」


ミルツは視線を感じた。
それはソーアからの視線だった。冷たく、それでいて激しく怒気を孕んだ彼女の目を見て、ミルツは背筋が凍る思いをする。
歴戦の勇者であるミルツが小娘であるはずのソーアに気迫負けするなど、あってはならないことであるはずだが、それでもミルツには今のソーアに眼力で到底勝てる気がせず、つい目を逸らしてしまった。


(知っている!ソーアは自分がサーラ様の計画に加担していることを知っている!)


戦女神殲滅のための武装船団は鹵獲した海賊船や民間船を改造したものだが、搭乗員はミルツの息のかかった青の騎士団員であった。
包囲網を破り、船団を返り討ちにしたというのなら、生き残った搭乗員一人でも締め上げればミルツが関わっていたこともバラしてしまっている可能性が高かった。


「かくなる上は・・・」


ミルツは今、この港に自分の配下が多くいることを把握していた。
こうなれば、数の力をもって今この場でソーアを殺してしまうしかない。そう考えた。後のことはどうとでもなる・・・どうとでもして見せる。
これから自分に降りかかる制裁などを考えれば、どれだけ苦しくても誤魔化しきってみせると。

「殺せ」とミルツが指示を出そうとした時だった。
ソーアはミルツ達が思いもよらない行動に出たのであった。
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