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計算外

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「謎の攻撃を受けて一度に数隻も沈められるって、どういうこと?」


口調こそ落ち着き払っているが、どこか苛立ちを隠せない雰囲気を纏うサーラが報告してきた部下に問う。


「調査中ですが、恐らく魔法攻撃のよるものであると思われます。この船も安全とは言い難いです。直ちに海域を離れるべきです!」


「ちっ」


サーラが舌打ちをする。
非常に面白いところで水を差されたことで、苛立ちが態度に現れるようにすらなっていた。
しかし危険な状況になりかけているという事実はサーラも勘づいていた。ソーアの最後を見たいところであるが、引き際を間違えてはいけない。


「撤退します。念のため、私はこの船を降りて小型船で脱出するわ。準備しなさい」


「はいっ!」


サーラの指示に部下が敬礼で応え、すぐさま走り去っていく。
反撃していると予想されるソーアの目を欺く意味も込め、足の速い小型船に乗り換えサーラが脱出する決断を下した。



「ソーアったら、何か新兵器でも出したのかしら?」


口に出してみたものの、そんなものは無いはずだとサーラは考える。事前にソーアの装備や引き連れている戦女神の戦力についても把握済みであるし、詰所に待機している他の戦女神の隊員も動けないように青の騎士団が監視しているはずだった。
万全を期してソーアに仕掛けた・・・そう断言できるのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
そうこう考えているうちにも、武装船は何隻か同じように爆発炎上して消滅したらしい。見ていると既にサーラの指示を待たずして撤退を開始した船もおり、現場は混乱を極めている。


「なんて醜態かしら・・・」


呆れ、溜め息をつくサーラ。落ち着いた態度に見えるが、相当に心の内は苛立っていた。
今回の武装船団は青の騎士団の中でも汚職に手を染めた団員の大半で構成されている。つまりは汚職はともあれ素性はれっきとしたマルセイユの正規軍なのだ。それがちょっとのイレギュラーがあっただけでこれだけ散り散りに無様な動きを見せている。
自分の指揮した軍が、まさか格下であると思っていた妹ソーアにかき乱されてしまうなど、屈辱も屈辱であった。




「準備が整いました!」


部下がサーラに向かってそう告げる。


「何はともあれ、今回はこれまでね」


サーラは部下が用意した小型船の所へ向かおうとした。
だが、サーラの脱出は叶わなかった。


「・・・なっ・・・?」


サーラの体に、短刀が突き立てられていた。
突き指したのは涙を流しながら、鬼の形相でサーラを睨んでいる、ソーアを裏切った新人の女隊員であった。
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