329 / 470
計算外
しおりを挟む
「謎の攻撃を受けて一度に数隻も沈められるって、どういうこと?」
口調こそ落ち着き払っているが、どこか苛立ちを隠せない雰囲気を纏うサーラが報告してきた部下に問う。
「調査中ですが、恐らく魔法攻撃のよるものであると思われます。この船も安全とは言い難いです。直ちに海域を離れるべきです!」
「ちっ」
サーラが舌打ちをする。
非常に面白いところで水を差されたことで、苛立ちが態度に現れるようにすらなっていた。
しかし危険な状況になりかけているという事実はサーラも勘づいていた。ソーアの最後を見たいところであるが、引き際を間違えてはいけない。
「撤退します。念のため、私はこの船を降りて小型船で脱出するわ。準備しなさい」
「はいっ!」
サーラの指示に部下が敬礼で応え、すぐさま走り去っていく。
反撃していると予想されるソーアの目を欺く意味も込め、足の速い小型船に乗り換えサーラが脱出する決断を下した。
「ソーアったら、何か新兵器でも出したのかしら?」
口に出してみたものの、そんなものは無いはずだとサーラは考える。事前にソーアの装備や引き連れている戦女神の戦力についても把握済みであるし、詰所に待機している他の戦女神の隊員も動けないように青の騎士団が監視しているはずだった。
万全を期してソーアに仕掛けた・・・そう断言できるのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
そうこう考えているうちにも、武装船は何隻か同じように爆発炎上して消滅したらしい。見ていると既にサーラの指示を待たずして撤退を開始した船もおり、現場は混乱を極めている。
「なんて醜態かしら・・・」
呆れ、溜め息をつくサーラ。落ち着いた態度に見えるが、相当に心の内は苛立っていた。
今回の武装船団は青の騎士団の中でも汚職に手を染めた団員の大半で構成されている。つまりは汚職はともあれ素性はれっきとしたマルセイユの正規軍なのだ。それがちょっとのイレギュラーがあっただけでこれだけ散り散りに無様な動きを見せている。
自分の指揮した軍が、まさか格下であると思っていた妹ソーアにかき乱されてしまうなど、屈辱も屈辱であった。
「準備が整いました!」
部下がサーラに向かってそう告げる。
「何はともあれ、今回はこれまでね」
サーラは部下が用意した小型船の所へ向かおうとした。
だが、サーラの脱出は叶わなかった。
「・・・なっ・・・?」
サーラの体に、短刀が突き立てられていた。
突き指したのは涙を流しながら、鬼の形相でサーラを睨んでいる、ソーアを裏切った新人の女隊員であった。
口調こそ落ち着き払っているが、どこか苛立ちを隠せない雰囲気を纏うサーラが報告してきた部下に問う。
「調査中ですが、恐らく魔法攻撃のよるものであると思われます。この船も安全とは言い難いです。直ちに海域を離れるべきです!」
「ちっ」
サーラが舌打ちをする。
非常に面白いところで水を差されたことで、苛立ちが態度に現れるようにすらなっていた。
しかし危険な状況になりかけているという事実はサーラも勘づいていた。ソーアの最後を見たいところであるが、引き際を間違えてはいけない。
「撤退します。念のため、私はこの船を降りて小型船で脱出するわ。準備しなさい」
「はいっ!」
サーラの指示に部下が敬礼で応え、すぐさま走り去っていく。
反撃していると予想されるソーアの目を欺く意味も込め、足の速い小型船に乗り換えサーラが脱出する決断を下した。
「ソーアったら、何か新兵器でも出したのかしら?」
口に出してみたものの、そんなものは無いはずだとサーラは考える。事前にソーアの装備や引き連れている戦女神の戦力についても把握済みであるし、詰所に待機している他の戦女神の隊員も動けないように青の騎士団が監視しているはずだった。
万全を期してソーアに仕掛けた・・・そう断言できるのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
そうこう考えているうちにも、武装船は何隻か同じように爆発炎上して消滅したらしい。見ていると既にサーラの指示を待たずして撤退を開始した船もおり、現場は混乱を極めている。
「なんて醜態かしら・・・」
呆れ、溜め息をつくサーラ。落ち着いた態度に見えるが、相当に心の内は苛立っていた。
今回の武装船団は青の騎士団の中でも汚職に手を染めた団員の大半で構成されている。つまりは汚職はともあれ素性はれっきとしたマルセイユの正規軍なのだ。それがちょっとのイレギュラーがあっただけでこれだけ散り散りに無様な動きを見せている。
自分の指揮した軍が、まさか格下であると思っていた妹ソーアにかき乱されてしまうなど、屈辱も屈辱であった。
「準備が整いました!」
部下がサーラに向かってそう告げる。
「何はともあれ、今回はこれまでね」
サーラは部下が用意した小型船の所へ向かおうとした。
だが、サーラの脱出は叶わなかった。
「・・・なっ・・・?」
サーラの体に、短刀が突き立てられていた。
突き指したのは涙を流しながら、鬼の形相でサーラを睨んでいる、ソーアを裏切った新人の女隊員であった。
10
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる