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不気味さ

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「何も無かったの?」


サーラとの食事を終えて戻ってきたソーアに対し、エーペレスは意外そうな顔をして驚いていた。


「特に殺気のようなものも感じられませんでした。・・・それが逆に不気味ではありますが」


ソーアの護衛として、部屋の外で待機していたオミトは当時のことを語る。


「だが、決別したことだけははっきりしている」


一触即発の雰囲気になったということはなければ、シーラのときのような威圧も無かった。極々平和に、何事もなく食事は終わったのだ。
だが、汚職を続けるマルセイユを継承するサーラと、それに反発するソーアの立場は平行線ーー明確に二人の決別を意味していた。
シーラもソーアを咎めるときにはいくらか負の感情を露わにした。家族内の決別を避けようとしてか、それとも世論の沸き立ちを警戒してソーアの衝突を最小限にしたかったのか、それはわからない。

だがサーラは特に執着するでもなく、あっさりとソーアとの話し合いを終えた。
まるで結果はどうでも良いかのように。
ソーアにはそれが不気味で恐ろしく感じた。得体の知れない何かが自分の心臓を這い回っているかのような気持ち悪さがあった。


「これならまだお母様を相手にしたほうがマシだ・・・」


威圧感に恐ろしいものを感じるが、それでも分かりやすい分サーラのように気味の悪さのようなものはなかった。


「少し・・・警戒したほうが良いかもね。悪い予感がするわ」


エーペレスが顎に手を当てて考え込む。


「・・・そうだな。あの感じは・・・」


ソーアはサーラに対し、とあることに気付いた。
自分の良く知る人と感じが似ているな、と。


「本人に言ったら傷つくかな・・・?」


ソーアはがいるだろう北方を眺めて呟いた。
サーラのことを、ソーアはアーヴィガとどこか似ていると思ったのだ。
表面上は平淡としておきながら、心の中ではいろいろと残虐なことを考え、それを淡々と実行する・・・そんなアーヴィガとサーラがどこかかぶって見えたのだ。



結果を言うと、ソーアのこの感覚は間違ってはいなかった。
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