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「久しぶりねソーア」


サーラと約束したレストランに着くと、彼女は先にテーブルについて待っていた。
サーラは口元に笑みを浮かべ、久しぶりの姉妹の再会を喜んでいるように見える。だが、ソーアはサーラの目が笑っていないことに気付いていた。
サーラは顔だけで笑うことが多い。そういえばサーラのこういうところが苦手だったなとソーアが思い出した。これなら最初から怒りも笑いもしない無表情の母シーラの方が良いとずっと考えていた。


「ご無沙汰しています、サーラお姉様」


ソーアは緊張でやや声を震わせながら挨拶を返し、サーラと同じテーブルに着いた。



「ここのフルコースはとっても素晴らしいの。ソーアもきっと気に入ると思うわ」


サーラはそう言って微笑んだ。ここは普段のソーアなら近寄りもしないような、敷居の高いレストランであり、例えフルコースを気に入ろうと自分の意思で来ることは二度とないのだろうなとソーアは内心思った。


「自分の意思じゃ、ここには来ないって顔をしているわね」


心の内を見透かされ、ソーアはギョッとする。
サーラはそんなソーアを見て、更に口角を釣り上げた。


「ウフフ、ソーア。貴族たるもの、自分の心の内を見透かされたといって、簡単に表情に出すような失態を見せては駄目よ」


そう言って笑ってみせるサーラは、僅かではあるが演技ではなく本当に可笑しくて笑っているようにソーアには見えた。


「ソーア。私はこれからも貴方とこのレストランに来て、たまにはこうして一緒に食事をしてみたいと思っているの。私達はあまり接することはなかったけど、家族でしょ?」


優しい笑みを浮かべ、そう言うサーラにソーアは困惑する。
急にどうしたというのだ。サーラの真意がわからない、と。
サーラが心の底からソーアと食卓を囲みたい・・・そう考えているようにはとても見えなかった。
しかし、ソーアのそんな疑問はすぐに解けることになる。


「仲違いなんてしていたら、食事どころじゃないわ。そんなのは悲しいと思わない?」


「・・・!」


本題を斬りこんできた!とソーアは勘づいた。


「私の言いたいことはわかるわよね?ソーア」


「・・・」


「私たちが仲違いをしていれば、その結果待っているのは、こうして食事をすることが出来なくなることだけじゃない。いろいろなことに、人に、大きな影響が出るわ」


サーラの試すような視線を、ソーアは真っすぐに受け止める。
そしてゆっくりと口を開いた。
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