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未知との対峙

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「あら、中々似合うじゃない」


ソーアが久々に余所行きのドレスに袖を通すと、それを見たエーペレスが褒めたたえた。
サーラが指定してきた食事場所は有名な一流レストランだったので、一応それなりにでも恰好をつけなければいけなかったのだ。


「流石にいきなり何かを仕掛けてはこないと思うけど・・・万が一のときは頼むわよ、オミト」


エーペレスがそう言って、オミトに向けてウインクをする。


「・・・まぁ、私でもいないよりはマシでしょう」


エーペレスのウインクに少し照れたのか、オミトはやや視線を外しながら言った。オミトはソーアの護衛としてサーラとの食事に同行する予定だった。
ちなみにエーペレスとオミトの関係は以前から特に変わってはいない。・・・が、オミトは少しだけ意識してしまっているのか、またにギクシャクとするときだある。


「サーラお姉さまは愚かではない。何かを企んだとして、こんなわかりやすいタイミングで仕掛けてくることはないと思う」


「・・・まぁそれでも一応ね」


「まあ、逆にそう思わせておいて仕掛けて来るかもしれないが」


「・・・どっちなのよ」


サーラ・マルセイユは、ソーアから見ても測りかねる人物だった。
幼い頃から既に交流はほとんどなく、姉妹という関係であるという事実くらいしかソーアもわからない。サーラのみならずマルセイユの家族は大体な皆そんなものだから、サーラだけ特別というわけではないが。

だが、サーラが才女で、マルセイユの嫡子として申し分ない能力を持っており、既に実務もいくつか手掛けていること・・・そして人脈も既にそれなりに築いていること・・・そのことはソーアも知っていた。

母シーラの後釜として教育され、そして実務も継承するとなると、マルセイユ領で横行する密輸に対するスタンスもシーラのそれと同じであることは予想できる。となると、これから行く食事でも、それについての話題が振られることになるのは間違いないとソーアは緊張していた。

母シーラと対峙するときも緊張した。だが、今ほどではなかったとソーアは思い返す。サーラはきちんと向かい合って話すこと自体が初めてであり、得体も知れない。
だからオミトを護衛に寄越すとエーペレスが言ったとき、断ることはしなかった。冷静沈着かもしれない、激情家かもしれない・・・未知との対決がソーアを萎縮させていた。


「では、言ってくる」


迎えの馬車がやってくる。
ソーアは気を引き締め、馬車に乗り込んだ。
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