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ソーアの憂鬱

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「これは一体・・・」


アーヴィガの住むハルトマン領から離れた南の海洋都市・・・マルセイユ領にいるソーア・マルセイユは、海軍の自分の隊の詰所でアーヴィガから自分宛に届いた手紙を読んでいた。
わざわざ早馬で届けられており、伝書鳩を使うほどではないが、それに次ぐ重大な要件であるということに気付き手紙を即座に開封して読んでみたわけだが、書いてある内容を見てソーアは首を傾げてしまった。


「キアラが壊れた・・・彼女は私達との復縁を望んでいる・・・当然ショウとも・・・って・・・」


アーヴィガは変な冗談を言う男ではない。それもわざわざ早馬で手紙を持って来させておいて、いい加減なことをわざわざ書くわけがない。
だがしかし、アーヴィガの手紙に書いてあることが、ソーアにはどうしても真実であるとはにわかには信じられなかったのである。


「あの頑固なキアラが、まさかそんな」


ソーアは自分が怒りに任せてルーベルト邸に忍び込んだときに、キアラと対峙したときの記憶を呼び起こしていた。キアラに自分達と決別することになると必死で訴えた。それでもキアラは自分の意思を曲げなかった。最後の最後にソーアが差し伸べた手をキアラは振り払ったのだ。

それを突然どうして掌を返したのか。

キアラと再び仲良くするつもりなど毛頭ないが、もしアーヴィガと同じように自分とも話をしに来るのであれば、そのときは追い返そうとソーアは思った。最後の機会はくれてやった。それを袖にしたのはキアラ自身なのだ。過ぎ去ったことはもう元には戻らない。


ソーアはアーヴィガの手紙を仕舞うと、今度はもう一つの手紙を手に取った。

今のソーアにとって、心のつかえとなるのはキアラのことではない。もしキアラが来るとて、相手にはしない。それは心の苦にはならない。
だが、この手紙の主はそうしたくてもそうできない相手であった。

サーラ・マルセイユ。ソーアの姉にして、マルセイユの嫡子。次期マルセイユ辺境伯からソーアに宛てられた手紙だったのだ。


「いよいよ来たか・・・」


サーラからの手紙の内容は、サーラからの食事の誘いであった。
しかしソーアにはわかっていた。これがただの食事の誘いではないことを。これから始まるだろうことを想像すると、ソーアは震えが止まらなかった。
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