315 / 470
ソーアの憂鬱
しおりを挟む
「これは一体・・・」
アーヴィガの住むハルトマン領から離れた南の海洋都市・・・マルセイユ領にいるソーア・マルセイユは、海軍の自分の隊の詰所でアーヴィガから自分宛に届いた手紙を読んでいた。
わざわざ早馬で届けられており、伝書鳩を使うほどではないが、それに次ぐ重大な要件であるということに気付き手紙を即座に開封して読んでみたわけだが、書いてある内容を見てソーアは首を傾げてしまった。
「キアラが壊れた・・・彼女は私達との復縁を望んでいる・・・当然ショウとも・・・って・・・」
アーヴィガは変な冗談を言う男ではない。それもわざわざ早馬で手紙を持って来させておいて、いい加減なことをわざわざ書くわけがない。
だがしかし、アーヴィガの手紙に書いてあることが、ソーアにはどうしても真実であるとはにわかには信じられなかったのである。
「あの頑固なキアラが、まさかそんな」
ソーアは自分が怒りに任せてルーベルト邸に忍び込んだときに、キアラと対峙したときの記憶を呼び起こしていた。キアラに自分達と決別することになると必死で訴えた。それでもキアラは自分の意思を曲げなかった。最後の最後にソーアが差し伸べた手をキアラは振り払ったのだ。
それを突然どうして掌を返したのか。
キアラと再び仲良くするつもりなど毛頭ないが、もしアーヴィガと同じように自分とも話をしに来るのであれば、そのときは追い返そうとソーアは思った。最後の機会はくれてやった。それを袖にしたのはキアラ自身なのだ。過ぎ去ったことはもう元には戻らない。
ソーアはアーヴィガの手紙を仕舞うと、今度はもう一つの手紙を手に取った。
今のソーアにとって、心のつかえとなるのはキアラのことではない。もしキアラが来るとて、相手にはしない。それは心の苦にはならない。
だが、この手紙の主はそうしたくてもそうできない相手であった。
サーラ・マルセイユ。ソーアの姉にして、マルセイユの嫡子。次期マルセイユ辺境伯からソーアに宛てられた手紙だったのだ。
「いよいよ来たか・・・」
サーラからの手紙の内容は、サーラからの食事の誘いであった。
しかしソーアにはわかっていた。これがただの食事の誘いではないことを。これから始まるだろうことを想像すると、ソーアは震えが止まらなかった。
アーヴィガの住むハルトマン領から離れた南の海洋都市・・・マルセイユ領にいるソーア・マルセイユは、海軍の自分の隊の詰所でアーヴィガから自分宛に届いた手紙を読んでいた。
わざわざ早馬で届けられており、伝書鳩を使うほどではないが、それに次ぐ重大な要件であるということに気付き手紙を即座に開封して読んでみたわけだが、書いてある内容を見てソーアは首を傾げてしまった。
「キアラが壊れた・・・彼女は私達との復縁を望んでいる・・・当然ショウとも・・・って・・・」
アーヴィガは変な冗談を言う男ではない。それもわざわざ早馬で手紙を持って来させておいて、いい加減なことをわざわざ書くわけがない。
だがしかし、アーヴィガの手紙に書いてあることが、ソーアにはどうしても真実であるとはにわかには信じられなかったのである。
「あの頑固なキアラが、まさかそんな」
ソーアは自分が怒りに任せてルーベルト邸に忍び込んだときに、キアラと対峙したときの記憶を呼び起こしていた。キアラに自分達と決別することになると必死で訴えた。それでもキアラは自分の意思を曲げなかった。最後の最後にソーアが差し伸べた手をキアラは振り払ったのだ。
それを突然どうして掌を返したのか。
キアラと再び仲良くするつもりなど毛頭ないが、もしアーヴィガと同じように自分とも話をしに来るのであれば、そのときは追い返そうとソーアは思った。最後の機会はくれてやった。それを袖にしたのはキアラ自身なのだ。過ぎ去ったことはもう元には戻らない。
ソーアはアーヴィガの手紙を仕舞うと、今度はもう一つの手紙を手に取った。
今のソーアにとって、心のつかえとなるのはキアラのことではない。もしキアラが来るとて、相手にはしない。それは心の苦にはならない。
だが、この手紙の主はそうしたくてもそうできない相手であった。
サーラ・マルセイユ。ソーアの姉にして、マルセイユの嫡子。次期マルセイユ辺境伯からソーアに宛てられた手紙だったのだ。
「いよいよ来たか・・・」
サーラからの手紙の内容は、サーラからの食事の誘いであった。
しかしソーアにはわかっていた。これがただの食事の誘いではないことを。これから始まるだろうことを想像すると、ソーアは震えが止まらなかった。
10
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる