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嵐の予感

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キアラがどうしてここまで極端な変化を起こしたのかはアーヴィガにはわからない。
だが、今のキアラはアーヴィガのもう一人の幼馴染であり、同じくショウへの愛へ燃えるソーア・マルセイユという女とひどく重なって見えた。
一体どうしてこうなったのか。


(強烈な女に惚れられてばかりだな。ある意味女運が悪いのか?)


アーヴィガは内心ショウに対し同情する。
しかし、キアラがソーアと同じように見えたところで、アーヴィガにはソーアのように祝福してやるつもりはない。


「勝手に盛り上がっているところ悪いけど、ショウは既にソーアのものということになっている。諦めてもらったほうが良いだろうと忠告しておくよ」


今更のようだがアーヴィガは水を差す。
最後にキアラと会ったとき、ソーアはそのことについてけん制していたので、このことは覚えているはずだ。
ショウの相手がソーアであるのなら困難な愛でも祝福し応援するが、キアラのそれはそうするつもりはない。今更ショウへの気持ちに気付いたところで手遅れなのだと、アーヴィガは考えている。
そしてそれは自分達との友情についても同じだと思っていた。


「えぇ、ソーアとは話をつけないといけない・・・それは考えているわ」


しかしそんなアーヴィガに対し、キアラは目を細めてそう言った。
なんとなく、本当になんとなくだが、怒りに震えているような、いずれ相まみえる敵を見据えているような、そんな表情だった。
考えていたリアクションと違うなぁとアーヴィガは内心呆れ返るが、それは表情には出さない。


「それで?結局のところ、今日は一体どういった用件でここに来たんだい?」


新生キアラに慣れぬアーヴィガは神経をすり減らすことに耐え兼ね、もう用件を聞き出して早めに終わらせたいと思った。時間をかけて擦り潰すようにキアラを痛ぶってやろうと考えていたアーヴィガだったが、新生キアラに翻弄されすっかり逆に擦り潰されてしまっている。


「言ったでしょ?皆と仲直りをしたいって。まずはアーヴィガからだと思ったけど、少し私が短慮だったわ。いきなりそんなこと言われても、戸惑うだけよね」


何を今さら、と思ったがどうやら本気らしいキアラを見て、アーヴィガはもう何かを言うのをやめた。とりあえず自分の中でキアラのことを整理する時間が必要だ。もちろん、彼女の言う通り仲良くするつもりなど毛頭ないが。


「まずは行動であなた達の信頼を取り戻してみせるわ。今日のところはまず挨拶だけね」


キアラはそう言って口角を上げる。


「・・・一体君は・・・」


今日のキアラは良く笑う、とアーヴィガは思った。
これまでのキアラから考えると違和感しかない。


(疲れた・・・)


新生キアラに翻弄され、アーヴィガは体中にドッと疲労感が押し寄せていた。
キアラが帰ってから、アーヴィガはソーアに向けて手紙を出した。キアラはソーアと話をつけると言っていた。なれば、キアラがソーアに接触するのは近いだろう。
彼女達が接触したとき、一体何が起こってしまうだろうと、アーヴィガは考えるだけで背筋が凍るような感覚に襲われた。
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