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見た目は同じ。中身は別人

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アーヴィガには目の前のキアラを名乗る少女と、自分の知る幼馴染キアラ・ルーベルトとがまるで結びつかなかった。
綺麗で長い銀髪、まるで人形のように整った顔立ち、見た目は完全にキアラそのもので間違いないのだが、あまりにが彼の知るキアラとかけ離れていているからだ。


「私?そうね、新しく生まれ変わったキアラ・ルーベルト・・・シン・キアラとでも名乗ろうかしら?なんてね。フフッ」


お道化たようにそう言ったキアラは、最後の最後でたまらないといった感じで噴き出した。


ナンダ、コレハ・・・


アーヴィガはキアラのあまりの変化に愕然とした。
キアラは表情をほとんど変えない。幼馴染である自分なら、多少変化に気付く・・・そんなレベルであったのだが、今のキアラは実にコロコロと表情を変える。冗談をこのように言うような性格ではなかったし、声を出して笑うなんてこともない。噴き出すだなんて以ての外だ。
見た目はそのままなのに、中身だけすっかり他の誰かと入れ替えたかのようなキアラの変化に、アーヴィガはすっかりペースを崩されてしまっていた。
絶対零度のはずのアーヴィガは、それだけ今目の前にしている異質なるキアラに驚愕し、混乱させられていたのである。


「何が狙いなんだい?」


混乱こそしているものの、かろうじてそれを表情に出さずアーヴィガは質問をした。
聞くとキアラは今までショウと接していたとき、彼の好みに添うように自分を演じていたという。ならば、今目の前にいるキアラもなんらかの目的のために演じられた姿を見せているのではないか、アーヴィガはそう考えた。
アーヴィガに問われたキアラはソファに腰を掛けると、不敵に笑って答えた。


「私の目的は、以前の関係を取り戻すことよ」


キアラの答えを聞いて、アーヴィガはほんの僅かに眉を顰めた。


「それは僕やソーアとまた親交をしたい、そういうことなのかい?」


冷静にそう問うアーヴィガ。ふざけるなと一喝したいところだが、これ以上ペースを飲まれるわけにはいかないと、彼は平静を保っていた。


「アーヴィガやソーアとはまた幼馴染として仲良くしたいと思っているし、ショウとも復縁したいと思っているわ」


「何を馬鹿な・・・」


アーヴィガは激昂したくなる気持ちを抑えに抑えだが、それでもつい口から呆れの言葉が漏れた。
自分が謀略で国外へ追い出したショウと、どうして復縁を望むのだろう、そしてどうしてそれを自分の前で口に出せるのだろうと、アーヴィガはキアラの心の内が全く読めなくて困惑していた。
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