国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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誰だ君は

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穏やかな笑みを浮かべながらも、その心の内はそうそう見せず、常に冷静沈着…絶対零度の白いカリスマ、アーヴィガ・ハルトマン。
彼が表情を崩すときがあるなら、それは彼が心を許す幼馴染達だけである。
ショウやソーアがそうだ。これに以前はキアラも入っていたが、ショウを裏切ったことによる決別で、今はもう入っていない。今は心を許すどころか敵同士だとアーヴィガは認識している。それも最優先で叩くべき相手と認識しているレベルで、もはや強く恨んでいると言っていい。

そんなキアラをわざわざ屋敷に受け入れたのは、ハルトマンの影を使った印象工作による攻撃がどれほど効果をもたらしたのかを対象であるキアラ自身を直接目にすることで確認したかったことと、弱って縋ってくるだろう彼女に引導を渡してやりたい…そんなサディスティックな狙いからだった。そこに情けや好意は微塵もない。
どんな言い訳をしだすだろうか?それともこれまで見たことのない涙でも流して見せて同情を誘ってくるのだろうか?
それらをどう蹴散らしてやろうか?

常に涼しい顔をしているアーヴィガだが、心の内は非常に攻撃的だ。穏やかどころか生粋のサディストだ。そんな彼の本性を知るのは、ハルトマン家の関係者の極一部と、幼馴染達だけである。
今のアーヴィガはその持ち前の攻撃性をキアラに向けようとしている。


さぁ、楽しみの始まりだーーー

アーヴィガはうっすらと笑みを浮かべながら、キアラの待つ応接室の扉を開けた。






………おや?


応接室に入り、アーヴィガは一瞬驚いた。
ソファに腰掛けて待っていたキアラの服装が、外で着ていた無骨なコートと同じように黒い物であったからだ。
コートにも驚いたが、まさかその下のドレスまでもが黒だとは思っていなかったのだ。まるで葬式のようではないか。
困惑こそしつつも、アーヴィガは表情に出さず努めて冷静に淡々と口を開いた。


「待たせてすまなかった。ようこそルーベルト嬢」


落ち着き払った態度で挨拶するアーヴィガに、キアラは立ち上がって優雅にカーテシーをして挨拶を返す。
ここでまたもアーヴィガは驚愕する。もし飲み物を口に含んでいたら吹き出してしまうという粗相をしていただろう。

アーヴィガが驚いたのはキアラのドレス。改めて全身を見て気付いたが、黒を基調としたカラーリングに、僅かに入るグレーと赤。


「ああ、この服?どう?意外と似合うでしょう」


アーヴィガの目線の意味に気付いたキアラが、ニコリと笑ってその場でくるりと一回りした。


「ショウに合わせてみたのよ」


嬉しそうに笑うキアラを見て、アーヴィガは思わず口を開いていた。


「誰だ?君は……」


アーヴィガは目の前の人物が、自分の知るキアラ・ルーベルトとは思えなかったのだ。
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