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キアラのお手紙
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ショウの幼馴染である辺境伯アーヴィガ・ハルトマンは、領地の屋敷の執務室にて様々な書類に目を通していた。
ここ最近は領地運営以外にもやる事が多く多忙を極め、プライベートらしい時間はほとんど持てていない。だが、アーヴィガは特に苦に思うことなくそれらをこなしている。
多忙の専らの要因であるのはショウを陥れたラルスと王室、そしてアーヴィガの幼馴染にしてショウを裏切った元婚約者キアラの悪評を広める工作を、ハルトマン家の抱える諜報部隊『影』に広めさせることだからだ。
特に幼馴染であるショウを裏切ったキアラに対してのアーヴィガが抱えている憎しみは尋常ではない。だからその工作の指示や進捗の確認のために、睡眠時間やプライベートの時間を削ることなどなんとも思っていなかった。
むしろ工作を始めてから一月以上経過している今となっても、モチベーションは下がるどころか上がっていく一方だ。
ラルスと婚約し直したようだが、世論が許さないくらいには二人の評判を落とし込み、絶望を味わわせてやる・・・アーヴィガはそう考えている。
そんなアーヴィガの元に、ある日一通の手紙が届いた。
「旦那様・・・キアラ・ルーベルトから手紙が届いております」
「・・・なに?」
いつもは執事の前では表情を崩さないアーヴィガが、その報告を聞いたときには少しだけ眉をひそめた。
何かの間違いかと思い手紙を受け取って確かめるが、確かに差出人はキアラからの物であり、ルーベルト家の印まで押してある。
「・・・もしや」
決別したはずのキアラが突然アーヴィガに手紙を送ってくる理由。
それはアーヴィガの悪評工作をやめろと懇願してくること・・・恐らくそうなのではないかと考える。アーヴィガのことやハルトマン家の影の存在を知っているキアラであれば、自分に悪評が広まっていればその噂の出所にある程度の検討がつくだろう。
それを知った上で、アーヴィガに対し工作中断の警告、もしくは懇願をするつもりなのではないか。
「・・・ふむ」
だが、手紙の内容はキアラが後日ハルトマン邸を訪れ、アーヴィガと直接話がしたいという先触れであった。
手紙ではなく、直接会って懇願するつもりか?誰が会うか。
最初は断りの手紙を書くか、もしくは無視してやろうかとアーヴィガは考えた。だが、直接目の前でけんもほろろに申し出を一蹴してやったほうが、とても良いリアクションを見せてくれるかもしれない。そんなサディスティックな気持ちが芽生え、アーヴィガは訪問を受け入れる返事を送ったのである。
だが、実際にキアラが来たとき、アーヴィガはまるで予想だにしない流れに驚くことになる。
ここ最近は領地運営以外にもやる事が多く多忙を極め、プライベートらしい時間はほとんど持てていない。だが、アーヴィガは特に苦に思うことなくそれらをこなしている。
多忙の専らの要因であるのはショウを陥れたラルスと王室、そしてアーヴィガの幼馴染にしてショウを裏切った元婚約者キアラの悪評を広める工作を、ハルトマン家の抱える諜報部隊『影』に広めさせることだからだ。
特に幼馴染であるショウを裏切ったキアラに対してのアーヴィガが抱えている憎しみは尋常ではない。だからその工作の指示や進捗の確認のために、睡眠時間やプライベートの時間を削ることなどなんとも思っていなかった。
むしろ工作を始めてから一月以上経過している今となっても、モチベーションは下がるどころか上がっていく一方だ。
ラルスと婚約し直したようだが、世論が許さないくらいには二人の評判を落とし込み、絶望を味わわせてやる・・・アーヴィガはそう考えている。
そんなアーヴィガの元に、ある日一通の手紙が届いた。
「旦那様・・・キアラ・ルーベルトから手紙が届いております」
「・・・なに?」
いつもは執事の前では表情を崩さないアーヴィガが、その報告を聞いたときには少しだけ眉をひそめた。
何かの間違いかと思い手紙を受け取って確かめるが、確かに差出人はキアラからの物であり、ルーベルト家の印まで押してある。
「・・・もしや」
決別したはずのキアラが突然アーヴィガに手紙を送ってくる理由。
それはアーヴィガの悪評工作をやめろと懇願してくること・・・恐らくそうなのではないかと考える。アーヴィガのことやハルトマン家の影の存在を知っているキアラであれば、自分に悪評が広まっていればその噂の出所にある程度の検討がつくだろう。
それを知った上で、アーヴィガに対し工作中断の警告、もしくは懇願をするつもりなのではないか。
「・・・ふむ」
だが、手紙の内容はキアラが後日ハルトマン邸を訪れ、アーヴィガと直接話がしたいという先触れであった。
手紙ではなく、直接会って懇願するつもりか?誰が会うか。
最初は断りの手紙を書くか、もしくは無視してやろうかとアーヴィガは考えた。だが、直接目の前でけんもほろろに申し出を一蹴してやったほうが、とても良いリアクションを見せてくれるかもしれない。そんなサディスティックな気持ちが芽生え、アーヴィガは訪問を受け入れる返事を送ったのである。
だが、実際にキアラが来たとき、アーヴィガはまるで予想だにしない流れに驚くことになる。
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