国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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変態

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ラルスはキアラが部屋から出て行ってからも、しばらく呆けていた。
同じようにダグラスが近くで呆けて突っ立っていたが、やがてラルスへ挨拶することなく、フラフラと力なく部屋を出て行った。


「殿下・・・!ルーベルト公のあれは不敬では・・・?」


近衛騎士の言葉は今のラルスの頭には届かない。
自分の思い描いていた予定が全て狂うどころか、形式上だけとはいえ結んでいたはずのキアラとの婚約まで破棄されてしまった。それもキアラ直々にそれを決断し、ラルスに突きつけたのである。ラルスの精神的なショックは計り知れないものがあった。

だが、ラルスに与えられた過大なショックは、思いがけない方向に彼の思考を動かすことになった。


「・・・素晴らしい・・・」


「・・・え?」


ポツリと、ラルスが呟いた言葉に近衛騎士は眉を顰めた。


「やはり素晴らしい女だ。キアラ・・・」


恍惚な表情でそう言うラルスを、近衛騎士達は絶句して眺めていた。
大の男が失禁し、腰を抜かすというほどの失態まで見させられながらも、それでもなおラルスはそうした張本人に対し称賛をする。近衛騎士にはラルスの精神構造が理解できなかった。


(この人は・・・自分に靡かない女が好みなのか?マゾ・・・?)


ラルスの表情は恋する者のそれのようであり、近衛騎士の考えも的外れではなかったかもしれない。

ラルスはキアラに心を折られ、屈辱を味わされたはずだった。
だが、彼の心には恐怖心だけでなく、新たにキアラに対する恋心・・・狂信的な愛が芽生えていた。
絶対なる神を崇拝するような、信仰に近い熱愛。


「やはりキアラこそ・・・僕の妻となるべき人だ」


「様・・・?」目を輝かせてそう語ったラルスのことを、近衛騎士達は呆れかえって見ていた。
この王太子はやはりマゾヒストなのだ。変態なのだと、彼らは確信したのであった。




この日をもってラルスとキアラの婚約は破棄された。
だが、ラルスの愛はより深まり、キアラを諦めることはなかったのである。この一件により、ラルスはますます歪みを増し、もはや修正が不可能なレベルに到達しようとしていた。
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