306 / 471
シン・キアラ
しおりを挟む
「家まで帰るわ。出して頂戴」
キアラはレストランを出ると、ダグラスを連れてきて外に待機していたルーベルト家の馬車を見つけ、御者にそう言った。
「き、キアラお嬢様!?こ、公爵様は・・・?」
御者はダグラスが戻ってこず、キアラだけがやってきた上で自分だけ帰ると言い出したことにギョッとしたが、
「いいから早くだして。ここにいると不快な気持ちになるの」
と、背筋も凍るような冷たい声でキアラが言ったことで、慌てて馬車を出した。
(な、何だ!?お嬢様がいつもと雰囲気が全然違うっ・・・)
キアラは至って冷静な態度だが、ダグラスが不機嫌だったときよりも圧が凄いと御者は感じていた。
当主を置き去りにしてしまい、本来なら不安になってしまっても良いはずだが、そんなことより今現在キアラを不機嫌にすることのほうが彼には恐ろしく感じた。
馬車がルーベルト邸へ着くと、キアラは悠然と屋敷を進む。そして自室に戻ると、着替えるでもなくベッドに寝転がり、これからのことを考える。
ラルスと婚約破棄をし、ダグラスとも決別を果たした。
自分は自由だーーー
これからは自分のしたいことをすれば良い。
それを咎める者はいないし、これまであらゆるものを抑制されてきた自分には当然の権利だーー キアラはそう考えていた。
爽快な気分だった。
実の父と決別したことへの後悔や後味の悪さなど微塵も感じていない、実に晴れ晴れとした気持ちがキアラを満たしている。
これまでの自分は死んだ、とキアラははっきりと自覚する。
やりたいこと。
まずは仲の良かった幼馴染との復縁だ。
自分一人でいても、何をやっても空虚で満たされない。逆に幼馴染と一緒にいれば、今と違ってそれだけで心が満たされる。
以前は麻痺していてその有難みに気が付かなかった。だが、今は違う。今度は間違えない。
そしてもう一つやりたいことーー
ショウとの復縁。
もう一度彼と婚約を結び直したい。簡単には受け入れてくれないだろうが、それでも実現させるために出来ることは全てやりたいとキアラは考えていた。
普通に考えれば、両方とも実現困難な願望だ。
だが、キアラは微塵も悲観的な気持ちにはなっていなかった。
生まれ変わった今の自分なら何でも出来る、そんな確信があった。
「待っててね」
キアラは薄く笑う。
これまでのキアラが壊れた日だった。
キアラはレストランを出ると、ダグラスを連れてきて外に待機していたルーベルト家の馬車を見つけ、御者にそう言った。
「き、キアラお嬢様!?こ、公爵様は・・・?」
御者はダグラスが戻ってこず、キアラだけがやってきた上で自分だけ帰ると言い出したことにギョッとしたが、
「いいから早くだして。ここにいると不快な気持ちになるの」
と、背筋も凍るような冷たい声でキアラが言ったことで、慌てて馬車を出した。
(な、何だ!?お嬢様がいつもと雰囲気が全然違うっ・・・)
キアラは至って冷静な態度だが、ダグラスが不機嫌だったときよりも圧が凄いと御者は感じていた。
当主を置き去りにしてしまい、本来なら不安になってしまっても良いはずだが、そんなことより今現在キアラを不機嫌にすることのほうが彼には恐ろしく感じた。
馬車がルーベルト邸へ着くと、キアラは悠然と屋敷を進む。そして自室に戻ると、着替えるでもなくベッドに寝転がり、これからのことを考える。
ラルスと婚約破棄をし、ダグラスとも決別を果たした。
自分は自由だーーー
これからは自分のしたいことをすれば良い。
それを咎める者はいないし、これまであらゆるものを抑制されてきた自分には当然の権利だーー キアラはそう考えていた。
爽快な気分だった。
実の父と決別したことへの後悔や後味の悪さなど微塵も感じていない、実に晴れ晴れとした気持ちがキアラを満たしている。
これまでの自分は死んだ、とキアラははっきりと自覚する。
やりたいこと。
まずは仲の良かった幼馴染との復縁だ。
自分一人でいても、何をやっても空虚で満たされない。逆に幼馴染と一緒にいれば、今と違ってそれだけで心が満たされる。
以前は麻痺していてその有難みに気が付かなかった。だが、今は違う。今度は間違えない。
そしてもう一つやりたいことーー
ショウとの復縁。
もう一度彼と婚約を結び直したい。簡単には受け入れてくれないだろうが、それでも実現させるために出来ることは全てやりたいとキアラは考えていた。
普通に考えれば、両方とも実現困難な願望だ。
だが、キアラは微塵も悲観的な気持ちにはなっていなかった。
生まれ変わった今の自分なら何でも出来る、そんな確信があった。
「待っててね」
キアラは薄く笑う。
これまでのキアラが壊れた日だった。
11
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる