国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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シン・キアラ

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「家まで帰るわ。出して頂戴」


キアラはレストランを出ると、ダグラスを連れてきて外に待機していたルーベルト家の馬車を見つけ、御者にそう言った。


「き、キアラお嬢様!?こ、公爵様は・・・?」


御者はダグラスが戻ってこず、キアラだけがやってきた上で自分だけ帰ると言い出したことにギョッとしたが、


「いいから早くだして。ここにいると不快な気持ちになるの」


と、背筋も凍るような冷たい声でキアラが言ったことで、慌てて馬車を出した。


(な、何だ!?お嬢様がいつもと雰囲気が全然違うっ・・・)


キアラは至って冷静な態度だが、ダグラスが不機嫌だったときよりも圧が凄いと御者は感じていた。
当主を置き去りにしてしまい、本来なら不安になってしまっても良いはずだが、そんなことより今現在キアラを不機嫌にすることのほうが彼には恐ろしく感じた。

馬車がルーベルト邸へ着くと、キアラは悠然と屋敷を進む。そして自室に戻ると、着替えるでもなくベッドに寝転がり、これからのことを考える。

ラルスと婚約破棄をし、ダグラスとも決別を果たした。
自分は自由だーーー

これからは自分のしたいことをすれば良い。
それを咎める者はいないし、これまであらゆるものを抑制されてきた自分には当然の権利だーー キアラはそう考えていた。

爽快な気分だった。
実の父と決別したことへの後悔や後味の悪さなど微塵も感じていない、実に晴れ晴れとした気持ちがキアラを満たしている。
これまでの自分は死んだ、とキアラははっきりと自覚する。


やりたいこと。

まずは仲の良かった幼馴染との復縁だ。
自分一人でいても、何をやっても空虚で満たされない。逆に幼馴染と一緒にいれば、今と違ってそれだけで心が満たされる。
以前は麻痺していてその有難みに気が付かなかった。だが、今は違う。今度は間違えない。


そしてもう一つやりたいことーー

ショウとの復縁。
もう一度彼と婚約を結び直したい。簡単には受け入れてくれないだろうが、それでも実現させるために出来ることは全てやりたいとキアラは考えていた。



普通に考えれば、両方とも実現困難な願望だ。
だが、キアラは微塵も悲観的な気持ちにはなっていなかった。
生まれ変わった今の自分なら何でも出来る、そんな確信があった。


「待っててね」


キアラは薄く笑う。
これまでのキアラが壊れた日だった。
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