305 / 471
半端者
しおりを挟む
キアラが去り、残されたのは腰を抜かしたままのラルスと、彼を起こそうとしている近衛騎士。そして、呆然としているダグラスだ。
ダグラスはキアラの言った言葉を頭の中で思い返し、目を見開いたまま口を半開きにさせていた。
ーー何をやっても半端。
これまでダグラスは自分を見下した父にもそんなことを言われたことはなかった。
それを実の娘に言われたことに、ショックを受けていた。しかも、彼女に言われたことはダグラス自身が自覚し、コンプレックスを抱いていたことだからだ。
怒りは湧いてこなかった。何しろ事実なのだから。
ラルスに依頼を受け、如何わしい使用用途なのだろうと疑いながらも、封魔のブレスレットは自身のプライドを賭けて本気で設計したものだった。
ダグラスの娘でありながら、キアラは彼を大きく超える魔法の才能を持っていた。キアラの才能がダグラスの研究の成果によるものだという確証があったわけでもなかったのもあって、ダグラスはキアラにコンプレックスを抱いていたのだ。
天才と言われるキアラの魔法力を、自分の設計した魔法アイテムが完封することが出来れば、それはダグラスがキアラを負かしたことになる。
ダグラスはそんな歪んだ思いを自身が設計するブレスレットに叩き込んだ。
会心の出来だった。何重にも封魔の術式を組み込み、うまく合間を縫って防護魔法の術式も編み込んだ。
何があっても壊れないはずのブレスレットが、キアラの手によって粉々に破壊されていた。
どういった手段で破壊したのかはわからない。
ただ一つわかることは、自身が本気で打ち込んだ封魔のブレスレットはキアラの手によって破壊され、自分は彼女に完敗したということ。
「半端・・・か、そうだな・・・ハハ」
魔法アイテムの設計者としても半端。父としても半端。貴族としての立ち位置も半端。魔法使い学校の方も運営に支障をきたしている。キアラが拒否した以上、ラルスとの婚約ももう叶うことはないだろう。
倫理観を投げうって、王族の協力を受けてなおこの結果なのだ。反論の余地もなく、半端者なのは自覚できた。
プライドすらかなぐり捨て、何でもやってきた。
それでもこのザマか。
ダグラスは溜め息をついた。
その目には生気が無かった。
ダグラスはキアラの言った言葉を頭の中で思い返し、目を見開いたまま口を半開きにさせていた。
ーー何をやっても半端。
これまでダグラスは自分を見下した父にもそんなことを言われたことはなかった。
それを実の娘に言われたことに、ショックを受けていた。しかも、彼女に言われたことはダグラス自身が自覚し、コンプレックスを抱いていたことだからだ。
怒りは湧いてこなかった。何しろ事実なのだから。
ラルスに依頼を受け、如何わしい使用用途なのだろうと疑いながらも、封魔のブレスレットは自身のプライドを賭けて本気で設計したものだった。
ダグラスの娘でありながら、キアラは彼を大きく超える魔法の才能を持っていた。キアラの才能がダグラスの研究の成果によるものだという確証があったわけでもなかったのもあって、ダグラスはキアラにコンプレックスを抱いていたのだ。
天才と言われるキアラの魔法力を、自分の設計した魔法アイテムが完封することが出来れば、それはダグラスがキアラを負かしたことになる。
ダグラスはそんな歪んだ思いを自身が設計するブレスレットに叩き込んだ。
会心の出来だった。何重にも封魔の術式を組み込み、うまく合間を縫って防護魔法の術式も編み込んだ。
何があっても壊れないはずのブレスレットが、キアラの手によって粉々に破壊されていた。
どういった手段で破壊したのかはわからない。
ただ一つわかることは、自身が本気で打ち込んだ封魔のブレスレットはキアラの手によって破壊され、自分は彼女に完敗したということ。
「半端・・・か、そうだな・・・ハハ」
魔法アイテムの設計者としても半端。父としても半端。貴族としての立ち位置も半端。魔法使い学校の方も運営に支障をきたしている。キアラが拒否した以上、ラルスとの婚約ももう叶うことはないだろう。
倫理観を投げうって、王族の協力を受けてなおこの結果なのだ。反論の余地もなく、半端者なのは自覚できた。
プライドすらかなぐり捨て、何でもやってきた。
それでもこのザマか。
ダグラスは溜め息をついた。
その目には生気が無かった。
1
お気に入りに追加
658
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる