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半端者

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キアラが去り、残されたのは腰を抜かしたままのラルスと、彼を起こそうとしている近衛騎士。そして、呆然としているダグラスだ。
ダグラスはキアラの言った言葉を頭の中で思い返し、目を見開いたまま口を半開きにさせていた。

ーー何をやっても半端。


これまでダグラスは自分を見下した父にもそんなことを言われたことはなかった。
それを実の娘に言われたことに、ショックを受けていた。しかも、彼女に言われたことはダグラス自身が自覚し、コンプレックスを抱いていたことだからだ。

怒りは湧いてこなかった。何しろ事実なのだから。
ラルスに依頼を受け、如何わしい使用用途なのだろうと疑いながらも、封魔のブレスレットは自身のプライドを賭けて本気で設計したものだった。
ダグラスの娘でありながら、キアラは彼を大きく超える魔法の才能を持っていた。キアラの才能がダグラスの研究の成果によるものだという確証があったわけでもなかったのもあって、ダグラスはキアラにコンプレックスを抱いていたのだ。
天才と言われるキアラの魔法力を、自分の設計した魔法アイテムが完封することが出来れば、それはダグラスがキアラを負かしたことになる。

ダグラスはそんな歪んだ思いを自身が設計するブレスレットに叩き込んだ。
会心の出来だった。何重にも封魔の術式を組み込み、うまく合間を縫って防護魔法の術式も編み込んだ。
何があっても壊れないはずのブレスレットが、キアラの手によって粉々に破壊されていた。

どういった手段で破壊したのかはわからない。
ただ一つわかることは、自身が本気で打ち込んだ封魔のブレスレットはキアラの手によって破壊され、自分は彼女に完敗したということ。


「半端・・・か、そうだな・・・ハハ」


魔法アイテムの設計者としても半端。父としても半端。貴族としての立ち位置も半端。魔法使い学校の方も運営に支障をきたしている。キアラが拒否した以上、ラルスとの婚約ももう叶うことはないだろう。
倫理観を投げうって、王族の協力を受けてなおこの結果なのだ。反論の余地もなく、半端者なのは自覚できた。


プライドすらかなぐり捨て、
それでもこのザマか。


ダグラスは溜め息をついた。
その目には生気が無かった。
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