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ダグラスの叱責

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肉体強化魔法。
それはランドールではメジャーではないが、世界のとある辺境で編み出された補助魔法だった。
キアラは世界中の魔術書を読み漁るうちにこの肉体強化魔法を知り、アレンジを加えたものを身に着けている。元来魔法は己の体内にある魔力を詠唱という手続きを行うことによって変形させ、外部に放出する。それは炎だったり氷だったり風だったり、形は様々であるがこれが所謂攻撃魔法というやつだ。アミルカの使う浄化もやっていることは同じである。
では攻撃魔法のように外に放出しない場合はどうか。あくまで魔法の効果を自身の肉体に留めおくものであるのなら、詠唱も要らず他人に魔法の使用も悟られないのではないか・・・キアラはそう考え、本来詠唱の必要な肉体強化魔法を詠唱不要のものにアレンジをした。
術式を簡易的に組み替える作業から実験まで何日もかかる試みだったが、魔法の天才であるキアラ故かそれは成功した。
そして今に至る。

魔法封じのブレスレットは確かにダグラスが設計し、効果は間違いないはずだったが、「魔力を外部へ放出」するわけではない肉体強化を防ぐことは出来なかった。
もっとも、キアラの莫大な魔力をもってすれば、その気になればブレスレットの限界を超えるほど強力な魔法を使うことが出来るので、結局はラルスが用意させたキアラの魔法対策はどのみち無駄に終わったわけだが。


「殿下っっ!!」


キアラと腰を抜かしたラルスが対峙していたところに、血相を変えたダグラスが人払いさせていた護衛騎士とともに部屋へ飛び込んできた。


「ダグラス・ルーベルト・・・」


ダグラスはキョトンとして自分を見つめるラルスの姿を認め、まずは安堵の溜め息を洩らす。
自分が設計したブレスレットの効果は果たして本当にキアラを抑え込めるのか不安だったのもあり、万が一にもキアラを激高させたラルスが彼女の魔法で亡き者にされてやしないかと気が気でならなかったのだ。

かつての指揮官のようにはならなかったかーーー

どうにか間に合ったかとダグラスはホッとするが、しかしそれでもこの部屋が異様な状態になっていることに遅れて気が付いた。何しろラルスが尻餅をついており、キアラがそれを見下ろす形になっているからだ。
護衛騎士がラルスを起こそうかと動き出そうとしていたときだった。ダグラスが声を張り上げた。


「キアラ!お前、何をしているんだ!?」

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