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肉体強化

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「何を強がっている?」


ラルスはキアラの余裕ぶった態度に怯みながらも、それでもその恐怖心を押さえつけて強気に出た。
ダグラスに頼んだ禁魔法アイテムは間違いなく効果があるはずだ。これでキアラは魔法を使うことが出来ない。こうしてキアラを制するための保険として、大金をはたいてこのブレスレットを作らせたのだ。


「えっ・・・?」


だが、ラルスの目の前で信じられない出来事が起きた。
キアラが身に着けているブレスレットを着けていない方の手で握りこむと、バキンという破裂音がしたかと思うとブレスレットが一瞬にして粉々に砕け散ったのである。


「は・・・?」


キアラの手からバラバラになったブレスレットが落ちていく。
ラルスにはそれがまるでスローモーションのようにゆっくり見えた。


「そんな・・・馬鹿な・・・」


剛刀をもってしても傷すらつかないはずの強固な作りをしているブレスレットのはずだった。
正しい手順で解錠する以外には外すことはできない。力づくでどうにか出来るようなものではない設計だった。
だがキアラはやった。それもラルスのそれよりも遥かに細い腕で。


「お父様も浅慮だわ。魔法を封じるのだったら、もっといろいろと考えないと」


フッと口角を上げるキアラ。
人を小ばかにする笑み。ラルスはそれを見て怒りを感じるどころか、恐怖で慄いた。目の前にいる細身の少女が、得体の知れないとても恐ろしい存在にしか見えないのだ。


「装着者が魔法力を外部に放てない構造・・・これなら確かに普通の攻撃魔法は理論上防げるでしょうね。けど、外部じゃなくて内部・・・私の体に中にのみ効果を発する魔法は普通に使えることができたわよ。これで私の無力化したなんて思っていたなんて、ちょっと頭が抜けてるわね」


「な、内部・・・なんだそれは・・・?」


「肉体強化の魔法を使ったの。ブレスレットを壊した時の私の握力は500kgよ。そうした肉体強化の魔法は一切制限されることはなかったわ」


そう言ってキアラは何かをラルスの手元に放った。ラルスはその何かを手に取ると、それはキアラの指の力で曲げられただろう金貨だった。金貨を曲げるなどラルスにだって出来るはずもない芸当だ。


「あっ・・・」


ラルスは腰を抜かし、後ずさりをする。
キアラは無言で冷たい瞳でラルスを見下しながら、じわじわと距離を詰めた。
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