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馬鹿は自分
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キアラの放った攻撃魔法「ナパーム」は、上位の爆炎系魔法だ。使えばラルスはおろか、この部屋の大半が吹き飛び、やがてその強力な炎と熱が建物全体を炎で包む全てを焦がすだろう。
キアラは本当にラルスを殺すつもりだった。跡形もなく消し去すつもりで魔法を使っていた。
だが、キアラが唱えたはずのその魔法は不発に終わっていた。
「・・・」
キアラは無表情で自分の掌を見つめる。
ラルスはその様子を見て声高らかに笑った。
「ふっ、ご自慢の魔法が使えないだろう?」
ラルスはキアラを完全に制圧したと勝ち誇っていた。歪んだ笑顔でキアラを見下す。
「先ほど渡したブレスレットは君の父上が開発した魔法の使用を禁止するアイテムだ。そして一度見につければ、僕の意思無くして決して外すことはできない」
ラルスの言葉を聞いて、キアラはブレスレットに手を伸ばしてみるものの、確かにキアラの手首にピッタリ巻き付くようにフィットし、一向に外れる様子がない。
ラルスは卑下た笑みを浮かべ、キアラのその様子を見つめていた。
絶望に打ちひしがれる様を見て、心を折ってから自分の物にしてやろう。ラルスはそう考えていた。
「ふぅん、装着者の魔力を外部に流せないように制限する構造になっているのね」
しかし、キアラはラルスが想像していたような、絶望したような表情を見せることはなかった。冷静に自分が身に着けたブレスレットについて解析をしているだけだ。
「そうだ、君の父上が特別にこのためにこさえたものだ。君が抵抗できることなく、僕のなすが儘になるためにね」
動じることないキアラに腹が立ち、あえて彼女を揺さぶろうとラルスはそのような言い方をする。
「ふふっ・・・」
しかし、キアラは動じるどころか小ばかにしたような笑みを浮かべるのみだった。
皮肉なことにラルスに初めて向けたキアラの笑みがこれである。
「あはっ、あはは・・・バカみたい」
キアラは笑う。ラルスを嘲笑っていると思いきや、少し違っていた。
「こんなものを私に作る父に全部まかせっきりだったなんて、なんて私は馬鹿だったのかしら」
キアラが嘲笑うのは自分自身。
これまで父を信じて自分が本当に大事に思っていた者を傷つけ、陥れた。
自分が何よりの馬鹿なのだとキアラは可笑しくて仕方が無かった。今の今までそんなことにも気づけなかったことに、本当に馬鹿らしい気持ちになる。
「・・・馬鹿だと気付いたついでに、もう諦めて僕のものになる気になったかい?抵抗は無駄だよ」
ラルスはキアラの様子に少し怖気づきながらも、そう言ってキアラの手を引こうとする。
だが、キアラの体はピクリとも動かなかった。
「貴方も自分が馬鹿だと気付くべきね。私がこんなもので無力化できると本当に思う?」
キアラは本当にラルスを殺すつもりだった。跡形もなく消し去すつもりで魔法を使っていた。
だが、キアラが唱えたはずのその魔法は不発に終わっていた。
「・・・」
キアラは無表情で自分の掌を見つめる。
ラルスはその様子を見て声高らかに笑った。
「ふっ、ご自慢の魔法が使えないだろう?」
ラルスはキアラを完全に制圧したと勝ち誇っていた。歪んだ笑顔でキアラを見下す。
「先ほど渡したブレスレットは君の父上が開発した魔法の使用を禁止するアイテムだ。そして一度見につければ、僕の意思無くして決して外すことはできない」
ラルスの言葉を聞いて、キアラはブレスレットに手を伸ばしてみるものの、確かにキアラの手首にピッタリ巻き付くようにフィットし、一向に外れる様子がない。
ラルスは卑下た笑みを浮かべ、キアラのその様子を見つめていた。
絶望に打ちひしがれる様を見て、心を折ってから自分の物にしてやろう。ラルスはそう考えていた。
「ふぅん、装着者の魔力を外部に流せないように制限する構造になっているのね」
しかし、キアラはラルスが想像していたような、絶望したような表情を見せることはなかった。冷静に自分が身に着けたブレスレットについて解析をしているだけだ。
「そうだ、君の父上が特別にこのためにこさえたものだ。君が抵抗できることなく、僕のなすが儘になるためにね」
動じることないキアラに腹が立ち、あえて彼女を揺さぶろうとラルスはそのような言い方をする。
「ふふっ・・・」
しかし、キアラは動じるどころか小ばかにしたような笑みを浮かべるのみだった。
皮肉なことにラルスに初めて向けたキアラの笑みがこれである。
「あはっ、あはは・・・バカみたい」
キアラは笑う。ラルスを嘲笑っていると思いきや、少し違っていた。
「こんなものを私に作る父に全部まかせっきりだったなんて、なんて私は馬鹿だったのかしら」
キアラが嘲笑うのは自分自身。
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自分が何よりの馬鹿なのだとキアラは可笑しくて仕方が無かった。今の今までそんなことにも気づけなかったことに、本当に馬鹿らしい気持ちになる。
「・・・馬鹿だと気付いたついでに、もう諦めて僕のものになる気になったかい?抵抗は無駄だよ」
ラルスはキアラの様子に少し怖気づきながらも、そう言ってキアラの手を引こうとする。
だが、キアラの体はピクリとも動かなかった。
「貴方も自分が馬鹿だと気付くべきね。私がこんなもので無力化できると本当に思う?」
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