国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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過度な反抗

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「なっ・・・何だこれは・・・!」


遠征に出ていたはずの王都騎士団に呼ばれ、ダグラスが駆け付けたそこでは驚愕する光景が広がっていた。

巨大な氷柱。地面から天に向かってそそり立つように、綺麗な水晶のような氷が張られていた。
自然に出来たものではない、魔法によって発生したものであることはわかる。10数メートルもの巨大な氷を張る魔法を使える者は限られるが、ダグラスが驚いたのはそれではない。その氷の中心にあるものだ。


「まさか・・・そんな・・・」


氷の中心にあるもの・・・それはキアラが参加した作戦の司令官。彼女に作戦参加の続行を無理強いした者だった。驚愕した表情のまま、氷の中で動かないでいる。氷を解かせばそのまま息を吹き返すのではないか?そう思えるほど綺麗な状態のまま絶命していた。



「これを、キアラがやったというのか・・・!?」


ダグラスは驚愕に目を見開いて、彼を案内した騎士に問う。
騎士は神妙な面持ちで頷いた。


「その・・・司令官がルーベルト嬢に対して作戦の続行を無理強いしていたところ、突然このようなことになったとのことです・・・。他に犠牲者はおりません」


「なんだと・・・?」


そんなことで、それだけのことで司令官の命を奪ったというのか?
キアラは従順なのではなかったのか?


「キアラは・・・どうしてる?」


「お嬢様は、昨夜のうちにお屋敷に戻られ、本日はショウ・ルーデル様とお会いになられております」


ダグラスの問いに侍従が答える。キアラはダグラスと入れ違いでこの現場を去っていた。
司令官を凍らせた後は、特に悪びれる様子もなく、まるで何事も無かったかのように帰りの馬車に乗り込んだという。


「馬鹿な・・・」


感情の起伏の少ない娘だとは思っていた。
だが、しれっとたやすく人の命を奪うほどだとは思ってもみなかった。
そしてそのことを恐らく何とも思っていない。自分の邪魔をする人間を払って終わり、それ以上のことではないのだろう。
悪いことだと思っていない。むしろ自分の自由を侵害した者こそが悪なのではないか、そうとまで考えているかもしれない。


「ダグラス・ルーベルト様。今回のこそは、こちらの不手際ということで片を付けておくということです」


騎士が言った。
司令官は確かにそれなりの身分ではあったが、それでも個人的な価値としてはキアラに大きく劣る。一介の騎士と世界一と呼ばれるほどの魔法使いでは価値が全然違うのだ。
司令官の死は魔物の不意打ちということで終わらせることになるようだった。


「キアラをただ従順なだけだと思ってはいかんということか・・・」


ダグラスは心にそれを深く刻み込んだつもりだった。
だが、それ以降キアラは他に反抗する素振りを見せたことがなかったので、いつの日かこのこと自体をダグラスは忘れてしまっていた。
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