296 / 471
過度な反抗
しおりを挟む
「なっ・・・何だこれは・・・!」
遠征に出ていたはずの王都騎士団に呼ばれ、ダグラスが駆け付けたそこでは驚愕する光景が広がっていた。
巨大な氷柱。地面から天に向かってそそり立つように、綺麗な水晶のような氷が張られていた。
自然に出来たものではない、魔法によって発生したものであることはわかる。10数メートルもの巨大な氷を張る魔法を使える者は限られるが、ダグラスが驚いたのはそれではない。その氷の中心にあるものだ。
「まさか・・・そんな・・・」
氷の中心にあるもの・・・それはキアラが参加した作戦の司令官。彼女に作戦参加の続行を無理強いした者だった。驚愕した表情のまま、氷の中で動かないでいる。氷を解かせばそのまま息を吹き返すのではないか?そう思えるほど綺麗な状態のまま絶命していた。
「これを、キアラがやったというのか・・・!?」
ダグラスは驚愕に目を見開いて、彼を案内した騎士に問う。
騎士は神妙な面持ちで頷いた。
「その・・・司令官がルーベルト嬢に対して作戦の続行を無理強いしていたところ、突然このようなことになったとのことです・・・。他に犠牲者はおりません」
「なんだと・・・?」
そんなことで、それだけのことで司令官の命を奪ったというのか?
キアラは従順なのではなかったのか?
「キアラは・・・どうしてる?」
「お嬢様は、昨夜のうちにお屋敷に戻られ、本日はショウ・ルーデル様とお会いになられております」
ダグラスの問いに侍従が答える。キアラはダグラスと入れ違いでこの現場を去っていた。
司令官を凍らせた後は、特に悪びれる様子もなく、まるで何事も無かったかのように帰りの馬車に乗り込んだという。
「馬鹿な・・・」
感情の起伏の少ない娘だとは思っていた。
だが、しれっとたやすく人の命を奪うほどだとは思ってもみなかった。
そしてそのことを恐らく何とも思っていない。自分の邪魔をする人間を払って終わり、それ以上のことではないのだろう。
悪いことだと思っていない。むしろ自分の自由を侵害した者こそが悪なのではないか、そうとまで考えているかもしれない。
「ダグラス・ルーベルト様。今回のこそは、こちらの不手際ということで片を付けておくということです」
騎士が言った。
司令官は確かにそれなりの身分ではあったが、それでも個人的な価値としてはキアラに大きく劣る。一介の騎士と世界一と呼ばれるほどの魔法使いでは価値が全然違うのだ。
司令官の死は魔物の不意打ちということで終わらせることになるようだった。
「キアラをただ従順なだけだと思ってはいかんということか・・・」
ダグラスは心にそれを深く刻み込んだつもりだった。
だが、それ以降キアラは他に反抗する素振りを見せたことがなかったので、いつの日かこのこと自体をダグラスは忘れてしまっていた。
遠征に出ていたはずの王都騎士団に呼ばれ、ダグラスが駆け付けたそこでは驚愕する光景が広がっていた。
巨大な氷柱。地面から天に向かってそそり立つように、綺麗な水晶のような氷が張られていた。
自然に出来たものではない、魔法によって発生したものであることはわかる。10数メートルもの巨大な氷を張る魔法を使える者は限られるが、ダグラスが驚いたのはそれではない。その氷の中心にあるものだ。
「まさか・・・そんな・・・」
氷の中心にあるもの・・・それはキアラが参加した作戦の司令官。彼女に作戦参加の続行を無理強いした者だった。驚愕した表情のまま、氷の中で動かないでいる。氷を解かせばそのまま息を吹き返すのではないか?そう思えるほど綺麗な状態のまま絶命していた。
「これを、キアラがやったというのか・・・!?」
ダグラスは驚愕に目を見開いて、彼を案内した騎士に問う。
騎士は神妙な面持ちで頷いた。
「その・・・司令官がルーベルト嬢に対して作戦の続行を無理強いしていたところ、突然このようなことになったとのことです・・・。他に犠牲者はおりません」
「なんだと・・・?」
そんなことで、それだけのことで司令官の命を奪ったというのか?
キアラは従順なのではなかったのか?
「キアラは・・・どうしてる?」
「お嬢様は、昨夜のうちにお屋敷に戻られ、本日はショウ・ルーデル様とお会いになられております」
ダグラスの問いに侍従が答える。キアラはダグラスと入れ違いでこの現場を去っていた。
司令官を凍らせた後は、特に悪びれる様子もなく、まるで何事も無かったかのように帰りの馬車に乗り込んだという。
「馬鹿な・・・」
感情の起伏の少ない娘だとは思っていた。
だが、しれっとたやすく人の命を奪うほどだとは思ってもみなかった。
そしてそのことを恐らく何とも思っていない。自分の邪魔をする人間を払って終わり、それ以上のことではないのだろう。
悪いことだと思っていない。むしろ自分の自由を侵害した者こそが悪なのではないか、そうとまで考えているかもしれない。
「ダグラス・ルーベルト様。今回のこそは、こちらの不手際ということで片を付けておくということです」
騎士が言った。
司令官は確かにそれなりの身分ではあったが、それでも個人的な価値としてはキアラに大きく劣る。一介の騎士と世界一と呼ばれるほどの魔法使いでは価値が全然違うのだ。
司令官の死は魔物の不意打ちということで終わらせることになるようだった。
「キアラをただ従順なだけだと思ってはいかんということか・・・」
ダグラスは心にそれを深く刻み込んだつもりだった。
だが、それ以降キアラは他に反抗する素振りを見せたことがなかったので、いつの日かこのこと自体をダグラスは忘れてしまっていた。
1
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる