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ダグラスへの不穏な依頼

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「それは・・・可能ではありますが・・・」


ラルスはダグラスにとある魔法アイテムの開発を依頼した。
理論上は可能、そう言質を取ったラルスは、若干訝しむダグラスの戸惑いを余所に上機嫌になる。


「金はいくらかかっても問題ない。なるべく早く開発をしておいてくれないか。美しい装飾も忘れないよう」


ラルスはこの日、ダグラスを魔法研究所所長と見て訊ねていた。ラルスは王太子、ランドールの裏の顔である魔法研究所の存在については当然知っていたが、それでもダグラスと『キアラの父』ではなく『研究所所長』として訊ねるのは異例だった。その段階で不穏な話になるのでは、とダグラスは考えていたが、まさに彼の予感は的中した。


「その・・・それは・・・」


ダグラスは言い淀む。だが意を決して重い口を開いた。


「・・・何に使われるものなのでしょう?」


それの答えはある程度予想がついていたものだった。それでもダグラスは聞いた。


「・・・そのときが来れば教えるよ」


ダグラスは返答を避けた。
まともな神経を持つ者なら軽々しく言えぬような内容だったからだ。ラルスにはまだそれだけの理性は残っていた。


「畏まりました。進捗に関しましては、その都度ご連絡するようにいたします」


自分は魔法研究所所長。
王家の命令であるならば淡々とそれをこなす他ない。そう自分に言い聞かせ、ダグラスはラルスにそう返事をした。

悲しいかな、ダグラスは根が魔法学の研究者であるために、ラルスの依頼する品がろくなことに使われないと知っていても、一度取り掛かってしまえば休むことなく集中して打ち込んだ。あるいは後ろめたさを誤魔化すためにあえてそうなったのかもしれない。


「出来た・・・か?」


図面が出来上がったとき、達成感の後にダグラスにやっていたのは大きな後悔と不安だった。
ダグラスの図面を元に制作が行われているときも、うまくいってほしい、という気持ちと何ならかの理由で失敗してほしい・・・ その二つの真逆の気持ちがぶつかりあっていた。

結果として、制作は特に問題もなく終えた。皮肉にも極度に集中して打ち込んだダグラスが書いた図面は会心の出来だったからだ。






「お待たせしました。これがご依頼されました品になります。『装着者の魔法を使用を禁ずるブレスレット』です」


ダグラスは不敵に微笑むラルスにそれを手渡した。
もうここまで来たら何に使おうが関係ない。自分は知らぬことだ、そう言い聞かせてあえてダグラスはラルスがこの魔法アイテムを何に使うかを問うことはなかった。
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