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ラルスの初恋

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ラルス・ターリンはランドール王国の国王バレス・ターリンの長男として生まれた。
長身で容姿は端麗。学業も剣術も優秀な成績を収め、人望も厚いラルスは少年の頃から次期国王として多大な期待を寄せていた。

自分の娘をそんなラルスの嫁に、と考える高位貴族は決して少なく無かったが、ラルスを溺愛していた父バレスは例え時期が多少遅れようとも、ラルスが心から望む相手を次期王妃にと考えていた。

そんなラルスの心に止まろうと、彼に密かにアプローチをかける令嬢は多かった。しかし誰もが彼の心を掴むには至らない。
誰もが美しく着飾り、実際に会話して頭は回るとわかるし容姿も良い。素晴らしい王妃候補となるだろう女性は何人もいた。しかし、何かが違う・・・

そう考えていたラルスはある日、衝撃的な出会いを果たす。それがキアラ・ルーベルトとの出会いだった。
美しい・・・それだけではなく、キアラがラルスを見る目に何の感情も無かった・・・それが斬新だった。
それまでにラルスを見る令嬢の視線は、どれもが強烈な熱を持っていた。それ自体は悪い気はしなかったが、その視線に慣れ過ぎた彼は、キアラの何の熱も持たないラルスへの視線に衝撃を受けたのだ。

自分を振り向かせたい。ラルスはそう思った。そして同時に、后にするなら彼女が良いと考えた。


しかし、それをバレスに告げたところキアラには既に婚約者がいることを知って愕然とする。

恋敵の名はショウ・ルーデル。
同じ学園に通う随分と目立ちたがりだと有名な、一部生徒で噂がされている辺境伯令息だった。

それまでには気にも留めなかったショウの存在をラルスは急に疎ましく感じるようになる。
ショウは確かに目立っていた。
剣術は煩くて独特だが実に豪快。学業も優秀で、容姿は元々良かったが服装などを変えてから特に映えるようになった。
意識するようになるとラルスは気付く。ショウは王太子である自分より目立っていると。
恋焦がれる人を、名声を、自分の欲しいものを奪っていくショウが許せなくなった。

ラルスは生まれて初めて王太子という身分であることを利用し、キアラの父であるダグラス・ルーベルトに彼女との婚約を迫った。
ダグラスは乗り気であったが、実際彼がそのように動き出しても事態は一向に動かなかった。どうやらルーベルト家において先代ルーベルト公の影響力は絶大で、彼が結ばせた縁談は死してなお当代にすら解消できなかったらしい。

王命での婚約はバレスが渋った。
それなりの名分が必要であり、強行すればラルスの廃太子のリスクすらあると言われ、彼はここで考える。

名分が立つ・・・つまり、ショウをキアラの婚約者でいられなくすれば良いのだと、そう考えたのだ。
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