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悲劇の暴走

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キアラは成長するにつれて、幼子ながら高度な魔術書を読みふけり、内容を理解し、そして魔法を実践できるほどの非凡なる才能を見せつける。明らかに母ブレアを超える逸材・・・天才であった。

キアラの将来が楽しみだと家族一同は思っていたが、彼女が10歳にもならぬうちに、ブレアはこの世を去る。

元より体が弱かったとはいえ、多分に実験の影響もあったろうとダグラスは自分を責めたが、死の間際、ブレアはそれを否定した。
そして、あくまで自分の信じる道を歩んでほしいと、自分の死のことで躊躇するようなことはしないでほしいと、ルーベルト家の名誉を取り戻すと言っていたときの情熱を取り戻してほしいと、最後にそう強く語り彼女は天に召される。


「自分の進むべき道を、かむしゃらに打ち込んでいく貴方はとても私には眩しかったわ」



ブレアはブレアで、ダグラスがずっと自分のことを気遣い、研究に打ち込めず成果も出せなかったことに負い目を感じていたのだ。

自分を最初に認めてくれた最愛の妻、ブレアの死によって、ダグラスの心は闇に閉ざされた。ブレアという光を失い、彼は日々絶望の中で暮らすようになる。

だがある日彼は行きついた。ブレアの最後の言葉の通り、かつての自分の情熱を取り戻そうと。
ルーベルト家の名誉を取り戻してみせると。何があろうと結果を出してみせると。ダグラスは初心に帰った。そうすることでブレアに顔向けが出来るとそう考えたのだ。


ブレアを失った悲しみを振り払うため、ダグラスは原点回帰し、魔法の研究に打ち込んだ。

だがブレアが願っていたそれと違い、そこにはがあった。
ダグラスにはブレアしか見えていなかったのだ。
キアラのことは本当の意味で考えていなかった。あくまでダグラスにとって最愛はブレアだったのだ。

それが悲劇を呼ぶことになるのだが、このときのダグラスはそれを知る由もない。
いや、知ったところで歩みを止めることはなかっただろう。

ダグラスの暴走がこのときより始まった。
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