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ダグラスの挫折
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「まさか・・・なんてことだ」
死人の種を使った人間の魔力強化実験。
特殊薬剤を数日かけて定期投与することにより、段階的に魔力の適性値を向上させていくという実験だった。だが、予定の半分も行かないうちからブレアが倒れ実験が中断となった。
ブレアは投薬による肉体の拒絶反応が起き、一時は仮死状態にまでなってしまったがどうにか一命をとりとめた。
結果として魔力の適性値はほとんど向上の跡が見られなかった。結果として実験は失敗といえた。悪戯にブレアの体を痛めることになってしまったとダグラスは嘆き、懺悔した。
「ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに」
ブレアはダグラスを責めるでもなく、あくまで自分の体が頑丈でないことが原因であると己を責めた。それがかえってダグラスの心を苦しめることになったのは皮肉な話だ。
ブレア以外にも数人、同じ実験をしたが、誰もが同じ結果になり、結局この実験は中止となった。
ーーーーー
「それで、お前は自分の名誉と探求心のために、最愛とやらの妻の体を悪戯に痛めつけたのか」
元来体はそこまで強く無かったが、ブレアは実験の失敗以来よく体調を崩すようになった。
そんなブレアに疑問を抱き、ダグラスを問い詰めたルーベルト公は、ブレアが実験の被験者となったことを知ってこう言った。
ダグラスには返す言葉が無かった。
もう少しで父を見返せると思った。その焦りがあったことは否定しきれなかったのだ。
「随分と軽いのだな。お前の最愛は」
これまで父とはお世辞にも関係が良好であるとは言えなかったダグラスだったが、この時以来、関係は完全に冷え切ることになった。父ルーベルト公はダグラスを徹底して見下し、目を合わせず、無関心となった。
ダグラスは人体強化の研究から手を引いた。
以降はマナポーションの開発など危険のない研究にのみ従事することになる。それなりに成果は上げてきたが、結局彼が目的としていたルーベルト家の復興からは遠ざかることになっていた。
だがそれから一年半後、ブレアがキアラを身籠った。
死人の種を使った人間の魔力強化実験。
特殊薬剤を数日かけて定期投与することにより、段階的に魔力の適性値を向上させていくという実験だった。だが、予定の半分も行かないうちからブレアが倒れ実験が中断となった。
ブレアは投薬による肉体の拒絶反応が起き、一時は仮死状態にまでなってしまったがどうにか一命をとりとめた。
結果として魔力の適性値はほとんど向上の跡が見られなかった。結果として実験は失敗といえた。悪戯にブレアの体を痛めることになってしまったとダグラスは嘆き、懺悔した。
「ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに」
ブレアはダグラスを責めるでもなく、あくまで自分の体が頑丈でないことが原因であると己を責めた。それがかえってダグラスの心を苦しめることになったのは皮肉な話だ。
ブレア以外にも数人、同じ実験をしたが、誰もが同じ結果になり、結局この実験は中止となった。
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「それで、お前は自分の名誉と探求心のために、最愛とやらの妻の体を悪戯に痛めつけたのか」
元来体はそこまで強く無かったが、ブレアは実験の失敗以来よく体調を崩すようになった。
そんなブレアに疑問を抱き、ダグラスを問い詰めたルーベルト公は、ブレアが実験の被験者となったことを知ってこう言った。
ダグラスには返す言葉が無かった。
もう少しで父を見返せると思った。その焦りがあったことは否定しきれなかったのだ。
「随分と軽いのだな。お前の最愛は」
これまで父とはお世辞にも関係が良好であるとは言えなかったダグラスだったが、この時以来、関係は完全に冷え切ることになった。父ルーベルト公はダグラスを徹底して見下し、目を合わせず、無関心となった。
ダグラスは人体強化の研究から手を引いた。
以降はマナポーションの開発など危険のない研究にのみ従事することになる。それなりに成果は上げてきたが、結局彼が目的としていたルーベルト家の復興からは遠ざかることになっていた。
だがそれから一年半後、ブレアがキアラを身籠った。
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