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自業自得

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「ルーベルト様」


ダグラス以外誰もいないと思われた所長室で、突然男の声で話しかけられ、ダグラスは一瞬驚いた様子を見せるが、すぐに落ち着き払って溜め息をついた。


「前から言っているだろう。驚くから突然話かけるなと」


そうやってダグラスが呆れた目線を向けるのは、屋内であるにも関わらずフードで顔を隠す見るからに怪しい黒づくめの男だ。


「いつの間に入ってきたのだ?」


「元よりこの部屋でルーベルト様をお待ちしておりましたよ。貴方が私に気付かなかっただけです」


それを聞き、ダグラスは再度溜め息をつく。不気味な男だ、と思ったがそれ以上は何も言わなかった。この怪しい黒づくめの男は自らを「K」と名乗り、そう呼べとだけ言ってそれ以外のことについては基本的には聞いても答えてはくれない。あちらから用があるときだけ突然姿を現し、そして知らぬ間に消えている。
Kはあくまでダグラスとある人物が連絡を取りあうためのメッセンジャーであり、ダグラスの配下ではなかった。


「『S』についてです。海外からのルートの増便について幾つか手を打ちましたが、効果が表れるのがいつのなるのか不明です。状況の改善に時間がかかるは必須ですので、Sの使用についても可能な限り節約に努めてほしいとのことです」


『S』とは死人の種のことである。魔法研究所内でも死人の種のことはSと皆呼んでいた。


「馬鹿にしているのか!そんなことはわかっている。だが、ここまでSが入って来なくなると、こちらとしても限界があるのだ!」


ダグラスはKに対し怒鳴りつけるが、Kは特に何の反応も見せなかった。伝えるべきことを伝えただけなのだから、この場で何を言われたとて彼自身には関係がない。そんな態度だった。


「こちらからの用件は以上になります。ルーベルト様からは何かございますか?」


「・・・!」


Kに対し、感情をぶつけたところで暖簾に腕押し。何の意味もない。
ダグラスはそれがわかっているからこそ、口を噤んだ。

ダグラスが特に何か言うつもりがないと察したKは、ダグラスが俯いて視線を外している間に姿を消していた。
ぶつける相手のない荒れに荒れた感情を、ダグラスは身に抱えたまま一人部屋に佇んだ。

どうしてこうなった。自分が思い描いていたものと違うじゃないか。
何もかもがうまくいかない。それには自業自得なところも多分にあったのだが、彼にはそれがわからない。

「私は・・・こんなところで躓いているわけにはいかないんだ」
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