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魔法研究所

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ダグラスが所長を務めるこの施設は通称『魔法研究所』。正確には『裏・魔法研究所』。
王宮に仕える者でも極一部の者しか知らぬ、ランドールの極秘施設である。王都から少し離れた森林の地下に建築されたもので、地上に入口は一切なく、転移魔法陣による空間転移のみによって行き来が可能になっている。


ランドール王国には二つの顔がある。
経済及び軍事力は中堅なれど、魔法強国であるという表の顔。
そして魔法強国として立場を維持するために、アルス教が禁止物としている死人の種を使った魔法研究を重ねて成果を出しているという裏の顔。
裏・魔法研究所はその禁忌の研究をするための施設なのだ。

ダグラス・ルーベルトは裏・魔法研究所の所長であり、ランドールの裏の顔の世界において実質トップに位置する人間だった。今日のランドールの魔法強国としての立ち位置は、彼の力なくしてはあり得ないと断言できるほどだ。
表はランドールの魔法力を下支えする魔法使い学校の学長であり公爵、裏では国際条約違反の研究をしている研究所の所長・・・それがダグラス・ルーベルトという男だった。


「全く、どいつもこいつも・・・!」


ダグラスは眉間に皺を寄せたままの表情で所長室の椅子に乱暴に座ると、大きく溜め息をついた。
ここ最近はダグラスは表でも裏でもどちらの世界でも苦労を強いられている。
表ではダグラスの学園の運営の支障、娘の縁談の難航、親戚内に置ける自身の立場の失墜。裏ではこの極秘の魔法研究所の活動に支障が出ているという問題が、今の彼に大きくのしかかっていた。

魔法研究所での悩みの種は研究に必要不可欠な死人の種の在庫の枯渇だった。
新たな魔法の開発、実験に多量の死人の種が使用されるし、研究所で開発生産されている魔法力を回復させる薬・・・マジックポーションを生産するための原料にもなっている。
死人の種がなければこの研究所は1ミリも動かない。だから国内外からコスト度外視で密輸して死人の種を手に入れてきたのだが、それがここ最近になって急に手に入りづらくなったのだ。

実のところ理由はソーアの苛烈な摘発によって海の密輸ルートが半壊してること、そしてその分増便させてしまったことで目を付けられるようになった陸ルートが、ショウ達によって摘発され続けていることだった。
海と陸の密輸ルートが半壊しているのはダグラスも報告を受けてはいるが、まさかそれが皮肉にもかつて自分が追い落としに加担したショウが関わっているとは夢にも思うまい。

思いも寄らぬ形でショウからの報復をあらゆる方面から受けているダグラスは、精神的にかなり追い詰められていた。
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