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ダグラス・ルーベルトの顔
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ショウ達がブレリアで死人の種騒動で戦っていたその時、ランドール王国の王都にあるルーベルト邸のとある一室では、キアラの父ダグラス・ルーベルトが壁にかけてある大きな肖像画を前に立ち呆けていた。
「ブレア・・・」
ダグラスは肖像画に描かれた人物ブレア・ルーベルトに語り掛けるように声を出した。ブレアはダグラスの妻であり、キアラの母である。
肖像画には若き日のダグラスとブレアが描かれている。キアラが生まれる前のもので、まだ写真すら世に誕生していなかった頃に画家に描かせたものだった。ダグラスが所有する、唯一のブレアの肖像画である。
「・・・」
ダグラスはそれ以上言葉を発することもなく、ただ黙って肖像画を見つめていた。その状態のまま時間が過ぎ、時計の針が半周する頃、ここで部屋の扉がノックされる音が響く。
「旦那様。お時間でございます」
扉の向こうから家令にそう声をかけられ、ダグラスは部屋にある時計をちらりと見た。
「待っていろ。すぐに行く」
ダグラスは扉に向けてそう声をかけると、最後に肖像画を一瞥し
「また来るよ」
彼は優しくそう言って、部屋を出て行った。
部屋を出て、待ち受けていた家令とともにダグラスは速足で歩き出し、やがて屋敷にある一室の前にまでやってくる。大型の金庫と言えるような、強固な扉がそこにあった。
「それでは言ってくる。後を頼むぞ」
ダグラスは家令にそう言うと、懐から鍵を取り出し、その分厚く強固な扉を開け、中から鍵を閉める。
ダグラスが入った部屋はただの正方形の何もない部屋だが、床には魔法陣が描かれている。ダグラスがそこに乗ると、彼の姿は一瞬にしてその場から姿を消した。これは人を一瞬にして離れた場所へと移動させることができる転移の魔法陣なのだ。
「お待ちしておりました」
ダグラスが転移した先は窓もない空間であった。壁は王城のようなブロック作りで飾り気がなく、先ほどまでダグラスがいたルーベルト邸とはかけ離れた空間だった。
ダグラスが転移した場所では数人の男が待ち構えており、彼の姿を見つけると一斉に頭を下げる。
「状況は?」
ダグラスは男達の横を素通りしてツカツカと歩き出す。男達は慌ててダグラスについていく。
「全体的に支障が出ております。既に実験からは『S』の催促が頻発するようになっています」
早歩きで移動しながら、男達はダグラスに報告する。
「そうか。では入荷の手配は?」
「既に何度もかけておりますが、実際に届いている量が少なく、枯渇寸前です。実験はこのままでは一月後には稼働が停止します。実験の職員からも不満の声が出ています」
「他から回せないか?」
「現在通達の通り開発に優先的に回しておりますので、そちらからなら・・・」
「・・・いや、開発のペースは落とすわけにはいかん。実験の連中はどうにか宥めておけ」
「ですがっ・・・!」
男達の声を無視し、歩行速度を緩めることなくダグラスは歩き続け、やがて衛兵に守られた部屋へと入って行った。男達はこの先に入ることが出来ないので、彼らはもの言いたげにしながらも諦めてトボトボと引き返した。
『所長室』
ダグラスが入った部屋のプレートにはそう書かれていた。
ダグラスは窓もない要請のようなこの施設の所長だった。
「ブレア・・・」
ダグラスは肖像画に描かれた人物ブレア・ルーベルトに語り掛けるように声を出した。ブレアはダグラスの妻であり、キアラの母である。
肖像画には若き日のダグラスとブレアが描かれている。キアラが生まれる前のもので、まだ写真すら世に誕生していなかった頃に画家に描かせたものだった。ダグラスが所有する、唯一のブレアの肖像画である。
「・・・」
ダグラスはそれ以上言葉を発することもなく、ただ黙って肖像画を見つめていた。その状態のまま時間が過ぎ、時計の針が半周する頃、ここで部屋の扉がノックされる音が響く。
「旦那様。お時間でございます」
扉の向こうから家令にそう声をかけられ、ダグラスは部屋にある時計をちらりと見た。
「待っていろ。すぐに行く」
ダグラスは扉に向けてそう声をかけると、最後に肖像画を一瞥し
「また来るよ」
彼は優しくそう言って、部屋を出て行った。
部屋を出て、待ち受けていた家令とともにダグラスは速足で歩き出し、やがて屋敷にある一室の前にまでやってくる。大型の金庫と言えるような、強固な扉がそこにあった。
「それでは言ってくる。後を頼むぞ」
ダグラスは家令にそう言うと、懐から鍵を取り出し、その分厚く強固な扉を開け、中から鍵を閉める。
ダグラスが入った部屋はただの正方形の何もない部屋だが、床には魔法陣が描かれている。ダグラスがそこに乗ると、彼の姿は一瞬にしてその場から姿を消した。これは人を一瞬にして離れた場所へと移動させることができる転移の魔法陣なのだ。
「お待ちしておりました」
ダグラスが転移した先は窓もない空間であった。壁は王城のようなブロック作りで飾り気がなく、先ほどまでダグラスがいたルーベルト邸とはかけ離れた空間だった。
ダグラスが転移した場所では数人の男が待ち構えており、彼の姿を見つけると一斉に頭を下げる。
「状況は?」
ダグラスは男達の横を素通りしてツカツカと歩き出す。男達は慌ててダグラスについていく。
「全体的に支障が出ております。既に実験からは『S』の催促が頻発するようになっています」
早歩きで移動しながら、男達はダグラスに報告する。
「そうか。では入荷の手配は?」
「既に何度もかけておりますが、実際に届いている量が少なく、枯渇寸前です。実験はこのままでは一月後には稼働が停止します。実験の職員からも不満の声が出ています」
「他から回せないか?」
「現在通達の通り開発に優先的に回しておりますので、そちらからなら・・・」
「・・・いや、開発のペースは落とすわけにはいかん。実験の連中はどうにか宥めておけ」
「ですがっ・・・!」
男達の声を無視し、歩行速度を緩めることなくダグラスは歩き続け、やがて衛兵に守られた部屋へと入って行った。男達はこの先に入ることが出来ないので、彼らはもの言いたげにしながらも諦めてトボトボと引き返した。
『所長室』
ダグラスが入った部屋のプレートにはそう書かれていた。
ダグラスは窓もない要請のようなこの施設の所長だった。
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