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間男に釘を刺す

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「さて、今日のところはこれでお暇するが、本題を伝えるのを忘れていた」


椅子から立ち上がったロクフェルは、去り際にニコリと笑って言った。


「アミルカと仲良くしてほしい。これからは彼女に会いに陣まで来てくれて構わない」


「・・・は?」


コイツは何を言ってるんだ?そんな考えが顔に出ていたんだろう。ロクフェルは俺の顔を見て笑みを絶やさず続けた。


「君が彼女と仲良くすればするほど、君は我々の側に立つ可能性が高くなる。いざランドールと事を構えることになったとき、君に向こう側に行かれるといろいろと厄介なんだよ。だからアミルカと親睦を深めることに関しては一向に構わないし、むしろお願いしたいところでもある」


自分の所有物に対して執着を持ち、嫉妬深いというのは何だったのか。そう思えるほどロクフェルはあっけらかんとそう言った。俺とアミルカとの間にどれだけのことがあったのを把握しているのか、それはわからないが、少なくともただの友達以上の何かがあるということだけは察しているはずだ。
それでもまるで「そんなことは大したことじゃない」と言わんとばかりの態度に、俺は拍子抜けしたような何とも言えない気持ちになった。

だが、そうではなかった。最後の最後にきちんとロクフェルは釘を刺していった。


問題ない。それが最終的に私に有利に働くのだから。だが、一線を越えればどうなるかは・・・言うまでもないな?」


そう言ってロクフェルは部屋を出て行った。
最後に言った言葉は、口元こそ笑みを浮かべつつも目は笑っていなかった。

「そりゃそうか・・・」

一線を越えたとき、ロクフェルは俺を殺すつもりなのだろうと彼の目を見て察した。本当は俺がアミルカと親しくすることそのものも嫌なんだろうが、それでも損得で考えたときに俺の力が必要だと思うからあえてそこまでは許すつもりなのだろう。

「変なやつ・・・」


ロクフェルの目には間男に映る俺が言うのも何だが、彼は相当に変な男だと俺は思う。俺がキアラと婚約者だったときは、彼女に不用意に近づくような男は全て敵だと思っていたが。

ロクフェルの中ではアミルカは婚約者というよりは自分の大切な道具のような位置づけなのかもしれない。道具を利用して自分に有利な状況を作り出そうとしている、今の状態はそんな感じなのだろうか。だが、道具そのものを持っていかれるのは許さない、と。貴族の籍を抜けているとはいえ、ある意味実に貴族らしい考え方だと思った。

とはいえ、今後は自由にアミルカに会うこともできるのか・・・と少しだけ俺は胸が高鳴った。微妙な環境ではあるが、ザイル達が近くにいなくなってから、どうしようもなく俺の心に隙間風が吹いている感じがして嫌だったのだ。

この日から、俺はちょくちょくアミルカに会いに行ったのだった。
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