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復讐のススメ
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「わかっているだろ?君の祖国ランドールは死人の種を密輸している。アミルカのために君が立とうとするならば、いずれあそことは敵対することになるんだ」
ロクフェルの言葉を、俺はどこか別の世界のことのように聞いていた。
脳みそが現実として受け入れなかったのだ。
「ランドールと俺が?馬鹿な」
そう言って俺は乾いた笑みを浮かべたが
「君自身、本当にそう考えられているのか?」
ロクフェルのそんな言葉に、思わず笑みが消える。
わかってはいた。密輸隊商のルートからして、死人の種の行先はランドールであることくらいは予測がついている。ついていながらにして見ないようにしていた。今は摘発だけ力を入れようと、それだけ考えようと。
だが、実際に死人の種の摘発の第一人者ともいえるアルス教団の聖騎士団に言われると、否が応でも認めなければならなくなる。
ランドールが死人の種を活用することによってこの先もアミルカが苦しむことになるのなら、俺はランドールに刃を向けることも覚悟しなければならない。
「言っておくがアルス教団とてランドールのことを知らぬわけではない。ここ数十年どころか、それより遥か前からあそこは死人の種を使って魔法学の繁栄を続けていると調べがついているからな」
「・・・は?」
思わずあんぐりと口を開けてしまう俺を見て、ロクフェルは意外そうな顔をした。
「ん?そこまでは知らなかったのか。・・・あぁ、まぁそんなもんか」
なんだか勝手に納得されても困る。とても聞き捨てならないことを聞いてしまったしな。
「教えろ。何もかも。俺がどうするかはそれから決める」
そう言って迫る俺に、ロクフェルは楽しそうに笑いながら話してくれた。
アルス教団に記録されているランドール王国の闇の歴史を。魔法分野では世界のどこよりも頭一つ抜きん出ている秘密を。
ランドールの功績の全ては死人の種を使ってのものであるということを教わった。
ここオークヨークでは死人の種について知っているだけで何となく他の冒険者より優位に立っていたような気がしないでもないが、実際はそこから先の知るべき大事なことを何も知らなかったなんて情けなくて自分でも信じられない。それも自分の国のことをだ。
「ランドールも決して尻尾は出さないので教団としても確たる物的証拠がない。だから聖騎士団としても攻め込むことが出来ない。こうして教団とランドールとの膠着が延々と続いているという歴史があるのさ」
本当に俺は何も知らなかったのだと思い知る。
辺境伯家としてランドールを守るために戦っていたのに、国は俺にこういった大事なことを隠していたのだ。
ロクフェルの嘘である可能性が低いことは、死人の種の密輸行為が立証してしまっている。実際に死人の種を密輸していると思われる以上、彼の言葉の通りであると考えるのが一番自然だ。
こうして愕然としている俺をロクフェルは実に楽しそうに眺めていた。多分今の俺はロクフェルの思う通りに動いてしまっているのだろう。それがきっと彼には楽しくて仕方ないのだ。
命令でも脅迫でもなく、自発的に俺をランドール対抗への切り札になるように仕向けている。
「我々に協力するかは答えはすぐに出さなくていいよ。我々とランドールが衝突するのは、まだいつになるかはわからないからね。ただ、証拠集めもそこそこ進む中で、数年以内には何かしら変動が起きると思ってる。我々はその時の準備を既に始めている」
答えか。
悩ましいところだ。こんなとき相談したい相手はランドールにいる。彼なら何と言うだろうか。
ただ、俺はランドールそのものには愛着があるが、王家には特にそういうのはないんだよな。何しろ俺を追い出してくれたし。死人の種に関わっているのが王家主導によるものなら、それと戦うことになったとき聖騎士団側に加わってみるのは・・・案外スカッとするかもしれん。
アミルカのことや正義感を置いておいてみても、私怨だけでもランドールと戦う理由があるっちゃあることに苦笑いする。
だが、間違いなくその時、俺の前にはきっとキアラが立ち塞がることになるだろう。
そのことが頭の隅に引っかかった。
もしかすると、彼女に対しても俺は復讐を果たそうとすることになるのか?
ロクフェルの言葉を、俺はどこか別の世界のことのように聞いていた。
脳みそが現実として受け入れなかったのだ。
「ランドールと俺が?馬鹿な」
そう言って俺は乾いた笑みを浮かべたが
「君自身、本当にそう考えられているのか?」
ロクフェルのそんな言葉に、思わず笑みが消える。
わかってはいた。密輸隊商のルートからして、死人の種の行先はランドールであることくらいは予測がついている。ついていながらにして見ないようにしていた。今は摘発だけ力を入れようと、それだけ考えようと。
だが、実際に死人の種の摘発の第一人者ともいえるアルス教団の聖騎士団に言われると、否が応でも認めなければならなくなる。
ランドールが死人の種を活用することによってこの先もアミルカが苦しむことになるのなら、俺はランドールに刃を向けることも覚悟しなければならない。
「言っておくがアルス教団とてランドールのことを知らぬわけではない。ここ数十年どころか、それより遥か前からあそこは死人の種を使って魔法学の繁栄を続けていると調べがついているからな」
「・・・は?」
思わずあんぐりと口を開けてしまう俺を見て、ロクフェルは意外そうな顔をした。
「ん?そこまでは知らなかったのか。・・・あぁ、まぁそんなもんか」
なんだか勝手に納得されても困る。とても聞き捨てならないことを聞いてしまったしな。
「教えろ。何もかも。俺がどうするかはそれから決める」
そう言って迫る俺に、ロクフェルは楽しそうに笑いながら話してくれた。
アルス教団に記録されているランドール王国の闇の歴史を。魔法分野では世界のどこよりも頭一つ抜きん出ている秘密を。
ランドールの功績の全ては死人の種を使ってのものであるということを教わった。
ここオークヨークでは死人の種について知っているだけで何となく他の冒険者より優位に立っていたような気がしないでもないが、実際はそこから先の知るべき大事なことを何も知らなかったなんて情けなくて自分でも信じられない。それも自分の国のことをだ。
「ランドールも決して尻尾は出さないので教団としても確たる物的証拠がない。だから聖騎士団としても攻め込むことが出来ない。こうして教団とランドールとの膠着が延々と続いているという歴史があるのさ」
本当に俺は何も知らなかったのだと思い知る。
辺境伯家としてランドールを守るために戦っていたのに、国は俺にこういった大事なことを隠していたのだ。
ロクフェルの嘘である可能性が低いことは、死人の種の密輸行為が立証してしまっている。実際に死人の種を密輸していると思われる以上、彼の言葉の通りであると考えるのが一番自然だ。
こうして愕然としている俺をロクフェルは実に楽しそうに眺めていた。多分今の俺はロクフェルの思う通りに動いてしまっているのだろう。それがきっと彼には楽しくて仕方ないのだ。
命令でも脅迫でもなく、自発的に俺をランドール対抗への切り札になるように仕向けている。
「我々に協力するかは答えはすぐに出さなくていいよ。我々とランドールが衝突するのは、まだいつになるかはわからないからね。ただ、証拠集めもそこそこ進む中で、数年以内には何かしら変動が起きると思ってる。我々はその時の準備を既に始めている」
答えか。
悩ましいところだ。こんなとき相談したい相手はランドールにいる。彼なら何と言うだろうか。
ただ、俺はランドールそのものには愛着があるが、王家には特にそういうのはないんだよな。何しろ俺を追い出してくれたし。死人の種に関わっているのが王家主導によるものなら、それと戦うことになったとき聖騎士団側に加わってみるのは・・・案外スカッとするかもしれん。
アミルカのことや正義感を置いておいてみても、私怨だけでもランドールと戦う理由があるっちゃあることに苦笑いする。
だが、間違いなくその時、俺の前にはきっとキアラが立ち塞がることになるだろう。
そのことが頭の隅に引っかかった。
もしかすると、彼女に対しても俺は復讐を果たそうとすることになるのか?
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