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認定間男

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「おいおい・・・」


俺はあまりの出来事に頭が追い付かず、呆けた顔をしてしまった、
俺がアミルカを愛している?まぁ、人によってはそう見られることもあるだろう。それはいい。だがっ!それを指摘してくるのがアミルカの婚約者だというロクフェルというのはどういうことだ?煽っているのか?



「んあぁ、おっしゃらないで。そんなつもりはない、そんな気はない。そう言った誤魔化しは不要だ。君とアミルカの関係については、少しは調べがついている」


お道化たようにそう語るロクフェルを見つめながら、俺の背筋には冷たい汗が流れ込んでいた。
不貞のバレた間男が、相手方の亭主に詰め寄られるとこんな感じになるのだろうか?思わずつばを飲み込みながら、俺はあくまで平然としている風に装う。


「何を調べたのかはわからねぇが、そんな事実はないぜ」


少なくともちょっといろいろあったのはロクフェルと出会う前、しかもアミルカに婚約者がいると知る前だったのだ。不貞とはいえまい。だから俺ははっきりと言い切った。

・・・まぁ、俺のほうでなら不義があったというべきかもしれないがな・・・ソーアに対して。勢いに乗ってキスまではしてしまったが、その先はしていないから・・・できればソーアも許してくれるといいのだが。


「そうか、ま、それではここではこれ以上は追究しないでおこう」


ロクフェルは薄く笑い、肩を竦めてそう言った。俺とアミルカについて調べがついているといったのはブラフだったのか、それとも切り札は持っているが出し惜しみをするつもりなのか、それはわからないがとりあえず今ここでの追及はもうしないことにしたようだ。俺は平静を装いつつも、内心では少しだけホッとしていた。


「ではとりあえずここでは君がアミルカのことを愛しているという仮定の元で話を進めよう」


「は?」


なんだそれは。どうしてそんな恥ずかしい仮定を元に話をしなければならないのか。
ロクフェルは随分つかみどころがないというか、まったく読めないやつだ。だが、とりあえず俺は抗議するのをやめて話を聞くことにした。


「愛しのアミルカが苦しむ姿を見て、君は思ったはずだ。彼女が苦しまずに済む道を模索したい。出来ることがあるなら、何だってやってやりたい。自分の無力を憎んだはずだ」


「・・・」


ここまではまぁ、大体は当たっている。


「アミルカのためなら、今の君は誰をも敵に回せるはずだ。その確認がしたいのさ」


「過激なことを言う。それで、もしそうだと言ったら?」


ロクフェルの試すような視線を受け、俺も口角を上げてそう問う。


「いずれ君は、祖国を相手に戦うことになるかもしれないからね。君がこちら側の人間についていてくれると確信が欲しくて聞いてみたんだ。・・・どうやら、こちら側にいてくれるようで安心したがね」


「・・・あ?」


俺の作り笑いは一瞬にして凍り付いた。これに対し、ロクフェルは心底楽しそうに笑みを浮かべていた。
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