267 / 470
お見通し
しおりを挟む
「おぉ、聞いていた通り読書が趣味なんだね」
部屋に入ったロクフェルは、本がぎっしりと詰まった本棚を見て感嘆の声を上げた。
「聞いていた通り?」
「そうだよ。ショウ・ルーデルは読書が趣味だとランドールではそう有名ではなかったかい?」
そういえばランドールにいた頃は、人気集めのために読書が趣味であると捏造されたこともあったなと思い出す。途中から本当に読書が好きになったわけだが、どうやらロクフェルは俺がランドールにいたときの情報を良く知っているらしい。
「俺のことを良く知ってるんだな」
「あぁ、良く知っている。君は有名人だし、それに僕も立場上知らねばならなかった」
「立場上?」
俺の疑問に対し、ロクフェルは特に何も答えることはなかった。
変わりにどっかりと椅子に座ると、ロクフェルは何やら含み笑いをし、試すような視線を俺に向けて聞いてくる。
「それよりも、だ。アミルカの浄化を目の当たりにしてどう思ったかい?」
「・・・」
何故そんなことを聞いてくるのか。
俺はロクフェルの心の内がわからなかったが、それでも思ったままを答えることにした。
「見ていられないくらいきつかったよ。まぁ見たけどな・・・」
何度も目を背けそうになった。だが見た。ローザがそうしろと言ったから。そうするべきだと思ったから。
「ロクフェルさん、あんた俺にあれを見せてどうしたかったんだい?」
今度は俺が質問を返す。
ロクフェルが強権を使ってまで元来部外者であるはずの俺に見せた浄化。
恐らくこれが知れればアルス教団での立場はまずいものになるはずだった。そんなリスクを背負ってまで、どうして俺にあれを見せたのだろう。それがずっと気になっていた。
ただ俺にあれを見せて、反応を知りたかった・・・そんな悪趣味のために多大なリスクを背負うような愚か者にはロクフェルは見えなかった。
「・・・君はどうしたいと思った?」
どうも今日のロクフェルは俺の質問に答えたがらない日なのだろうか。質問を質問で返してばかりだ。そろそろイライラしてきたぞ。
「アミルカをあんな風に苦しませたくないと、きっと君はそう思ったはずだ」
怒りの意を表してやろうかと思ったところに、ロクフェルがそんなことを言ってきて毒気を抜かれた。
何故なら図星であるからだ。だが、それはあんな局面に遭えば誰だって考えることのはずだと俺は思う。だが、ロクフェルが言いたいことは、どうやらそういうことではなかったらしい。
「今以上にアミルカの力になりたい。彼女を守りたいと思っただろう?何故なら、君はアミルカを愛しているからだ」
ロクフェルの言葉に思わず「げっ」と口から出そうになるのを、俺は必死に堪えた。
部屋に入ったロクフェルは、本がぎっしりと詰まった本棚を見て感嘆の声を上げた。
「聞いていた通り?」
「そうだよ。ショウ・ルーデルは読書が趣味だとランドールではそう有名ではなかったかい?」
そういえばランドールにいた頃は、人気集めのために読書が趣味であると捏造されたこともあったなと思い出す。途中から本当に読書が好きになったわけだが、どうやらロクフェルは俺がランドールにいたときの情報を良く知っているらしい。
「俺のことを良く知ってるんだな」
「あぁ、良く知っている。君は有名人だし、それに僕も立場上知らねばならなかった」
「立場上?」
俺の疑問に対し、ロクフェルは特に何も答えることはなかった。
変わりにどっかりと椅子に座ると、ロクフェルは何やら含み笑いをし、試すような視線を俺に向けて聞いてくる。
「それよりも、だ。アミルカの浄化を目の当たりにしてどう思ったかい?」
「・・・」
何故そんなことを聞いてくるのか。
俺はロクフェルの心の内がわからなかったが、それでも思ったままを答えることにした。
「見ていられないくらいきつかったよ。まぁ見たけどな・・・」
何度も目を背けそうになった。だが見た。ローザがそうしろと言ったから。そうするべきだと思ったから。
「ロクフェルさん、あんた俺にあれを見せてどうしたかったんだい?」
今度は俺が質問を返す。
ロクフェルが強権を使ってまで元来部外者であるはずの俺に見せた浄化。
恐らくこれが知れればアルス教団での立場はまずいものになるはずだった。そんなリスクを背負ってまで、どうして俺にあれを見せたのだろう。それがずっと気になっていた。
ただ俺にあれを見せて、反応を知りたかった・・・そんな悪趣味のために多大なリスクを背負うような愚か者にはロクフェルは見えなかった。
「・・・君はどうしたいと思った?」
どうも今日のロクフェルは俺の質問に答えたがらない日なのだろうか。質問を質問で返してばかりだ。そろそろイライラしてきたぞ。
「アミルカをあんな風に苦しませたくないと、きっと君はそう思ったはずだ」
怒りの意を表してやろうかと思ったところに、ロクフェルがそんなことを言ってきて毒気を抜かれた。
何故なら図星であるからだ。だが、それはあんな局面に遭えば誰だって考えることのはずだと俺は思う。だが、ロクフェルが言いたいことは、どうやらそういうことではなかったらしい。
「今以上にアミルカの力になりたい。彼女を守りたいと思っただろう?何故なら、君はアミルカを愛しているからだ」
ロクフェルの言葉に思わず「げっ」と口から出そうになるのを、俺は必死に堪えた。
10
お気に入りに追加
652
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ハイスペな車と廃番勇者の少年との気長な旅をするメガネのおっさん
夕刻の灯
ファンタジー
ある日…神は、こう神託を人々に伝えました。
『勇者によって、平和になったこの世界には、勇者はもう必要ありません。なので、勇者が産まれる事はないでしょう…』
その神託から時が流れた。
勇者が産まれるはずが無い世界の片隅に
1人の少年が勇者の称号を持って産まれた。
そこからこの世界の歯車があちらこちらで狂い回り始める。
買ったばかりの新車の車を事故らせた。
アラサーのメガネのおっさん
崖下に落ちた〜‼︎
っと思ったら、異世界の森の中でした。
買ったばかりの新車の車は、いろんな意味で
ハイスペな車に変わってました。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる