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境界線
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「俺達、オークヨークに戻って冒険者をやめたら故郷へ帰ろうと思います」
テントから少し離れたところでザイル、クリフ、ドロシーの3人と俺は話をした。
ザイルの言葉に「そうかい」とだけ俺は返す。
三人は同じ村出身の幼馴染だと聞いた。皆で一緒に帰るのだろう。極秘依頼を受けた身であるとはいえ、冒険者稼業そのものから降りるというのであれば特にギルドからの弊害はないだろう。やる気のない者を就けたところで、そいつは足を引っ張るだけになるのがわかっている過酷な仕事なのだ。
「今回のことで・・・村のこと思い出しちまって・・・」
俯きながら言うクリフの言葉に、なるほどなと俺は納得した。
「私達がいない間にもし村がこんな目に遭ってたらと思うと・・・」
拳を握り締め、そう言うのはドロシー。
「あぁ、三人とも帰って村を守ってやりな」
俺は笑顔で三人を送り出すことにする。
帰れる故郷があるのなら、帰る選択をすることは悪いことじゃない。
俺だってランドールが気にかかるし、ルーデルに帰りたい気持ちはあるが、それはもう叶わないのだ。だからこそ余計にザイル達の決断を支持してやりたかった。
「守る・・・か。はは、本当はそんな大した話じゃないんスよ」
「・・・」
ザイルは俺から顔を逸らし、自傷気味に笑って懺悔のように呟いた。
「怖くなったんです。死人の種と関わるのが。俺達はショウさんのように割り切って戦えない。心を鬼に出来ない・・・結局半端者が逃げ帰るだけの話なんです」
「・・・」
俺は何も言わなかった。
同じ理由で黒の騎士団を辞めた人間なんて何十人と知っているからだ。
悪いことだとも情けないことだとも思わない。ルーデル家次期当主であった俺はある意味逃げ場がなかったから死人の種との戦いを続けていただけかもしれないのだから。
ザイル達みたいに悪意の無かった同じ人間を殺すのが嫌だ、そう考えて逃げるのが多分人として正常なのだ。
そして、そんな正常ではない俺を恐れることもきっと正常なのだ。
恐らくザイル達は今日自分達と俺との間に境界線を引いた。修羅とそうでない人間とで。
境界線の外にいる俺と、一緒にいるのが怖くなった・・・それが無意識のうちだとしても、多分そう考えてしまったのだ。
ザイル達は何度も謝罪の言葉を述べていた。
俺は良いと言っているのに、何度も何度も述べた。それは罪悪感からなのかそれとも・・・
この日以降、俺は再びオールヨークで一人になった。
テントから少し離れたところでザイル、クリフ、ドロシーの3人と俺は話をした。
ザイルの言葉に「そうかい」とだけ俺は返す。
三人は同じ村出身の幼馴染だと聞いた。皆で一緒に帰るのだろう。極秘依頼を受けた身であるとはいえ、冒険者稼業そのものから降りるというのであれば特にギルドからの弊害はないだろう。やる気のない者を就けたところで、そいつは足を引っ張るだけになるのがわかっている過酷な仕事なのだ。
「今回のことで・・・村のこと思い出しちまって・・・」
俯きながら言うクリフの言葉に、なるほどなと俺は納得した。
「私達がいない間にもし村がこんな目に遭ってたらと思うと・・・」
拳を握り締め、そう言うのはドロシー。
「あぁ、三人とも帰って村を守ってやりな」
俺は笑顔で三人を送り出すことにする。
帰れる故郷があるのなら、帰る選択をすることは悪いことじゃない。
俺だってランドールが気にかかるし、ルーデルに帰りたい気持ちはあるが、それはもう叶わないのだ。だからこそ余計にザイル達の決断を支持してやりたかった。
「守る・・・か。はは、本当はそんな大した話じゃないんスよ」
「・・・」
ザイルは俺から顔を逸らし、自傷気味に笑って懺悔のように呟いた。
「怖くなったんです。死人の種と関わるのが。俺達はショウさんのように割り切って戦えない。心を鬼に出来ない・・・結局半端者が逃げ帰るだけの話なんです」
「・・・」
俺は何も言わなかった。
同じ理由で黒の騎士団を辞めた人間なんて何十人と知っているからだ。
悪いことだとも情けないことだとも思わない。ルーデル家次期当主であった俺はある意味逃げ場がなかったから死人の種との戦いを続けていただけかもしれないのだから。
ザイル達みたいに悪意の無かった同じ人間を殺すのが嫌だ、そう考えて逃げるのが多分人として正常なのだ。
そして、そんな正常ではない俺を恐れることもきっと正常なのだ。
恐らくザイル達は今日自分達と俺との間に境界線を引いた。修羅とそうでない人間とで。
境界線の外にいる俺と、一緒にいるのが怖くなった・・・それが無意識のうちだとしても、多分そう考えてしまったのだ。
ザイル達は何度も謝罪の言葉を述べていた。
俺は良いと言っているのに、何度も何度も述べた。それは罪悪感からなのかそれとも・・・
この日以降、俺は再びオールヨークで一人になった。
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