国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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折れぬ者、折れた者

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アミルカの浄化が終わった日。倒れたアミルカがテントに運ばれると、俺はすぐにその場から引き離され、冒険者達用に展開されたテント群に連れていかれた。
日が沈み、その日のうちにオールヨークまで戻ることは不可能だったからだ。


「ここで見たことは他言無用よ」


離れ際に、ローザに堅く口止めをされた。言われずとも誰にも話すつもりはなかったし、見たはずの俺も今だにあれが現実だったのかと疑ってしまっている。頭の整理がついていない。


俺は聖騎士団が張ってくれたテントに入ると、ゴロンと寝床に寝そべった。
アミルカの浄化を目の当たりにし、これまで彼女に抱いていた印象が大きく変わったことを思い出す。
意識が朦朧としても、吐いても、彼女は命を削るように浄化に専念し、それをやり遂げた。
浄化の魔法は一回一回が大きく魔力を消費するものだが、それを何度も繰り返すことは当然体に大きな負担をかけると言う。
だが、アミルカは中断しようとせずついには休むことなくやり切った。
死人の種は風で簡単に飛んでいってしまう胞子のようなものだ。だから万が一があってはいけないため、浄化は時間をかけずにすぐにやってしまいたかったのだという。
これまでやってきた浄化も同じように時間をかけず、体に鞭打って最短で終わらせてきたらしい。

後は浄化という魔法そのものが恐ろしく集中力を必要とするものである故に、休憩を挟むたびに集中力を切らすと再び集中させるのに余計な時間がかかるのだとか。
とにかく、アミルカはリスクの拡大を嫌って浄化を最短の時間で終わらせることにこだわっている。故にどれだけ護衛に止められても、休憩を提案されても頑なにそれを拒む。それが分かりきっているために、問答で余計な神経を遣わせぬよう、護衛達は苦しみながらも役目を果たそうとするアミルカを黙って見ていたのだ。


「まさか・・・だな」


俺はアミルカがあそこまで鬼気迫るほどの信念を持つ人間だとは思っていなかった。正直なところ、俺だって彼女ほどの根性があるかはわからない。随分と印象が変わった。
アミルカはどうしてあそこまで使命を果たそうという気になれるのだろうか。それは果たしてただの義務感だけなのだろうか?何かあるのだろうか。
それをアミルカに聞きたいが、また彼女に近づく機会はあるのだろうかがわからない。

だが、ロクフェルも、ローザも、あえて俺がアミルカの浄化を見ることを良しとした。
ロクフェルに至ってはそれが今後プラスに働くから、みたいなことを言っていた。だとすれば・・・理由はわからないが、もしかしたら今後もアミルカに会える機会はあるのかもしれない。


・・・」


俺がそんなことを考えながら寝転んでいると、ザイルがテントに入ってきて声をかけてきた。
ザイルはこれまでの呼び方をしなかった。果たして意識してのことなのか、これは暗に俺とザイルの関係性が変わることを意味しているような気がしてならない。


「少し話、良いでしょうか。最後に」


俺は一瞬思考が停止しかけたが、起き上がって頷いた。
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