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信頼されている俺だから

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アミルカが浄化を行うという段階になり、冒険者達は一度今いるところから更に少し距離を取ったところで待機することになった。浄化を行うところを見えないようにするためだという。
冒険者達は基本的に共同戦線というだけであって部外者だ。だからそれはわかるのだが、冒険者達だけでなく、聖騎士団も極々一部を除いて退避させ、周囲の警戒に入るのだという。


「聖騎士団も近寄らせないのか?」


ならどうして部外者の俺を連れてきたんだ?と当然の疑問を抱く。


「本当に信頼のおける者しか彼女の元には近寄らせない。だから君とて、ただ見ているのではなく有事の際には護衛してもらえないといけないんだぞ。何しろ護衛の数は多くないんだ」


悪戯っぽく笑ってロクフェルは言った。
そこまで聞くとますます疑問が大きくなる。


「それなら、どうして俺なんて」


「君だからだ」


「・・・え?」


「聖女様が、アミルカが信頼した君だからこそ護衛として安心して彼女に就けたいと思っている」



そう言って笑うロクフェルの表情からは、どうにも感情が読み切れなかった。あえていうなら試すような、挑発するような、そんな雰囲気が感じ取れた。


「そうかい」


俺は多くは語らず、頷くに留めた。
もしかしたら、俺とアミルカにあったことを知っているのかもしれないと思うが、ブラフであるかもしれない。失言を引き出されるかもしれない以上、こちらからは可能な限り何も言わないほうが良さそうだ。


「いろいろ警戒させてしまったかな?けど、君に浄化を見てもらうことは今後のプラスになると判断したのは事実だ。しっかりと見ておいてほしいね。目をそらさずに」


意味ありげにロクフェルはそう言うと、彼は本部のテントに引き籠ってしまった。


「お、おい・・・」


俺どうすりゃあいいんだよ?と呆然としていると、そこへ聖騎士の一人が俺の元へやってきた。


「閣下からショウ様をご案内するよう仰せつかっております」


そう言って笑って見せたその聖騎士は、なんとドレッドだった。


「どうぞこちらに」


唖然とする俺に対しニヤリと笑いながら、されど慇懃無礼な言葉遣いでドレッドは俺を促すと、のっしのっしと先を歩いていく。


「おい、ロクフェルは・・・」


現場の指揮官が行かなくていいのか?と気になって彼が引き籠ったテントを見ながら言おうとすると


「彼は行かないわ」


いつの間にか、本当に気づかぬうちにいつの間にか隣にいたローザが俺の耳元で囁いた。



「~~~~~~~っ!!」


久しぶりにくらった不意打ちに言葉にならない声を上げてしまう俺。不覚だ。集中力を欠いているとどうしてもローザに先を越されてしまう。まだまだ気配察知の感覚を研ぎ澄ましておかないと。


「彼はアミルカに信頼されていないもの。浄化の力を使うときは、極力聖女がリラックスできる状況を作ることが望ましいとされているのよ。だから、来ないわ」


そう語るローザは、いつものような軽装ではなく軽量型とはいえ聖騎士の鎧を着込んでいた。
どうやらアミルカの傍にいられる聖騎士とやらには、ローザとドレッドが含まれているらしい。


「・・・なぁ、それよりロクフェルのやつ、俺とアミルカのこと・・・」


何か勘づいているんじゃないか?俺はそう思いローザに訊ねることにした。


「多分、知っているのかもね?まぁ向こうも情報屋を手元に置いているし」


彼女は何でもない風にそう言う。
俺は針の筵にいる気分になって硬直したが、クスクス笑うローザに背中を押されて前へ進まされるのであった。
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