国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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浄化のお誘い

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「すみません、役に立たなくなくて本当にすみません」


「・・・すんません」


「・・・ごめんなさい」


ザイル、クリフ、ドロシー、皆憔悴しきった表情で謝罪の言葉を述べ、項垂れていた。



「いや、いい。もう休め」


俺は出来るだけ優しく言うと、踵を返して彼らと距離を取った。
黒の騎士団にも心が折れてザイル達のようになった者はたくさんいた。元人間を相手にすることで心をすり減らして慣れてしまう前に、心守ろうとしてあえて折れることを選択するのも正しいことだと思っている。
俺達は戦士だが、人らしく心を保つために逃げるのは間違ったことではない。人でありながら心を人でない何かにしてまで戦う修羅になるのは必ずしも必要なことではないのだ。

ザイル達から距離を取り、しばし待っていると、上空に作戦終了の信号弾が上がった。
どうやら村の制圧が完了したようだ。
聖騎士の伝令兵が駆けてきて俺のところにやってくる。


「ロクフェル様がお呼びです。至急本陣までお願いします」


「わかった」


俺は冒険者達を置いて、本陣まで移動することにした。
その場を去り際にちらりとザイル達を見たが、俯いたまま動く様子も無かった。





-----



「まずはよくやってくれたよ礼を言う。お陰で標的をただ一つ漏れなく殲滅することができた」


本陣に到着した俺を出迎えたのは、破顔したロクフェルだった。
ただ一つ漏れなく殲滅・・・か。


「生存者は?」


俺は答えを知りつつ聞いてみる。


「ゼロだ。まぁ、疑わしきも処分してしまうが俺のやり方ってのもあるが、この状況ではもし生存者がいたとしても、どうせろくなことにはならん。楽にしてやるのがまだ情があるというものだ」


ロクフェルは何でもないといった風にそう言った。
生存者がいたとしても、この村で起きたことを口外させないために監禁に近い生活をさせることになるというのは作戦前に俺は聞いていた。それがアルス教団の方針であるらしかった。万が一にも死人の種の存在と、その脅威について知られるわけには行かない、その混乱により世界が恐慌に陥る・・・と言う考えが今の教団の主流だという。
だが、ロクフェルはそんな考えには懐疑的であるようだった印象を受けた。



「まぁ、何にせよこれで大体の仕事が終わったわけだ。後は『浄化』をするのみだ」


「浄化・・・」


アミルカの仕事か。


「君にはその浄化作業を見ていてもらいたくてね」


「え?」


俺は自分の耳を疑った。
『浄化』は聖女の能力の中でも特別中の特別。浄化作業中は幾重にも警備が敷かれ、一般人は誰一人見ることが出来ぬと俺は聞いていた。そんな場に俺を連れて行こうとするとロクフェルの考えが分からなかった。


「いいのか?」


だが、見てみたい・・・そういう気持ちが無かったわけではない俺は、ロクフェルの言葉に乗ることにした。


「必要なことだと判断した。よって、私が良いと言えば良いのだ。この場を指揮しているのは私だからな」


ロクフェルの言葉には含みがあるが、俺は頷いた。
アルス教の規律で言うならば、本来なら駄目なのだろうな。だがそれをロクフェルは現場判断で捻じ曲げようとしているのがわかった。
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